【プロ野球】3戦勝ち星なし。いま斎藤佑樹に必要なものは? (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 斎藤は5回を投げ切ったところで109球もの球数を費やしていた。そして6回、山崎、堂上剛、谷繁に3連打を浴びて、ついにノックアウト。6回途中で5失点となったピッチングを、斎藤はこう振り返った。

「初回に3点取ってもらって、楽な気持ちでマウンドに立てていたのに、いい形で後ろにつなげず、申し訳なく思っています。ブランコに打たれた一発は仕方ないにしても、次の1点を食い止められなかったことに悔いが残ります。序盤は思ったところに投げられていたと思いますが、ボール球が多かった。相手というより、自分がもっと成長しなくてはいけないですね。今日も5回、6回は投げる球がなかったですから……」

 高めを狙われているという感覚があったかという問いに対して、斎藤は「狙われているというより、全体的に甘い球が多かったから」と答えた。高めを狙われたというより、甘かったからフルスイングされたという感覚だったのだ。この試合、打線の奮起で5-5の引き分けに持ち込み、斎藤に負けはつかなかった。ネガティブに考えるような試合ではない。

 ふと、斎藤が早大時代、こんな話をしていたことを思い出した。

「僕は早実にいた頃、日大三のバッターによくホームランを打たれたんです。そのとき、なぜホームランを打たれるのかなぁと考えたんです。やっぱり甘いところにいったら打たれますけど、それ以前に、フルスイングをさせている自分がいるんじゃないかと思い当たりました。ピッチャーにとっては、バッターに考えさせないまま、1、2の3で振られるのが一番、怖いんです。だから、ただ強い球を投げるだけではなく、どこにどう投げたら相手がフルスイングできない状況を作れるかを考えるようになりました」

 今こそ、原点に戻るべきときなのかもしれない。高校時代のフルスイングさせないピッチングを、今のプロ2年目というソフトを使って開くと、どんなふうにアップデートしているのか、じつに興味深い。3試合勝ちはついていなくとも、調子が落ちているわけではないはずだ。この調子の波を小さいままにできるかどうかは、今の自分に対していかに冷静な視線を向けられるかに懸かっている。

 調子はいい。

 斎藤ならではの、フルスイングさせないピッチングをすればいい。

 しかも、次の登板は神宮だ。

 斎藤は5月31日、スワローズ戦での先発が予想されている。神宮球場――斎藤が原点に戻るには、まさにうってつけの場所ではないか。

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