【プロ野球】井川慶まさかの負傷降板も、大いなる可能性を秘めた62球 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 3回に打ち取った打球を野手がお見合いする不運から失点し、さらに一死満塁のピンチを迎えたが、内川をスライダーで空振り三振、続くペーニャも140キロのストレードでセカンドゴロに打ち取り、最少失点で切り抜けた。しかし、4回二死から江川智晃への2球目を投げたところで、右太もも裏の負傷により緊急降板となった。

「投げ終えた時にピキッときた感じだった。ベンチに戻って確認したら力は入ったんですけど、若干弱い気がしたので……」

 あっけない形で降板となったが、試合後、井川の投球について岡田彰布監督は開口一番、「よかったやろ。全然、(ファームの時とは)違うわな」と言った。

「もともと、1回投げたら登録を抹消しようと思ってたんやけど、2回を投げ終えた時にベンチで『落とされへんな』って言うたんや。テーピングを巻けば、まだ投げられてたかもわからんけど、まだそんな無理する時期やないから」

 3回2/3を投げて、被安打3、四球1、奪三振3、失点1。投じた62球のうち、32球がストレートで、うち22球が140キロを超えた。ここが何よりの収穫で、スライダーも指にかかり、低めにも決まっていた。カットボールやツーシームも時折混ぜ、かつてのイメージとは違うピッチングも披露した。ただ、得意球であるチェンジアップはまだ抜けが多く、ストレートに比べてはっきりと腕の振りが緩んでいた。また、アメリカでは中継ぎ登板が多く、中盤以降のスタミナがどうかも、現時点では確認できなかった。昨日の登板だけで戦力になるとは言い切れないが、可能性を感じさせるには十分なピッチングだった。

 そして、三宅氏が言った言葉をまた思い出した。

「彼は研究熱心で、頭のいい子やから」

 この登板を次にどうつなげてくるのか。日本球界に復帰した井川のピッチングから、まだ目が離せそうにない。

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