【プロ野球】井川慶まさかの負傷降板も、大いなる可能性を秘めた62球

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

4回途中、負傷により緊急降板した井川だったが、ソフトバンク打線相手に力強い投球が光った4回途中、負傷により緊急降板した井川だったが、ソフトバンク打線相手に力強い投球が光った 6年ぶりに日本球界に復帰した井川慶の一軍登板の約2時間前、ある人物に電話をかけた。その相手とは、現在、岡山商科大学でコーチを務める三宅博氏だ。1982年から25年間、ネット裏から阪神タイガースの戦いを支え続けた名物スコアラーで、井川の絶頂期を誰より知る男でもある。

 三宅氏は、「アメリカに行ってからは、ほとんど見てないですから」とひと言置いたあと、今も頭に焼き付いている井川のピッチングについて語った。

「彼が20勝して、チームも優勝した2003年。あのシーズンは最高やった。とにかく真っ直ぐとチェンジアップが、まったく同じ腕の振りで投げられるんです。真っ直ぐは150キロは出ていたからね。それと同じ振りで抜かれたら、そうは打てませんよ」

 それから9年。5年間のメジャー挑戦を終えて日本復帰を果たした井川だったが、厳しい現実が待っていた。一軍登板を前に、ウエスタンリーグで登板した3試合の結果は次の通り。

4月18日 広島戦 3回、被安打1、失点0
4月24日 ソフトバンク戦 5回、被安打7、失点5
5月1日 阪神戦 6回、被安打4、失点1

 数字だけを見れば3戦目で締めた格好だが、その試合でもストレートは最速139キロ。得意のチェンジアップも高めに浮き、右打者のひざ元を狙ったスライダーはことごとく抜けた。この試合を見ていた元女房役の矢野燿大氏も「最後はテンポも上がってきましたけど、このまま一軍でいけるかと言われたらクエスチョンですね......」と厳しい評価を下すしかなかった。

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