【プロ野球】6試合すべてクオリティスタート。2012年の斎藤佑樹はここが違う! (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 初回、斎藤はいきなりピンチを背負う。不振の坂口智隆に代えてトップで起用された梶本勇介に一塁線を抜かれ、2番の大引啓次を歩かせた、ノーアウト1、2塁。

 斎藤は3番の後藤光尊をあっという間に追い込みながら、粘られてフルカウントにしてしまう。そこから3球、ストレートをアウトロー、アウトハイ、インハイに投げ込み、その3球をすべてファウルにされてからの10球目。今度は一転、カットボールを懐に投げ込んだ。後藤はその球をサードのファウルゾーンに打ち上げてしまう。

 特筆すべきは、ピンポイントではなくともストライクゾーンを外さないだけのコントロールと、ここぞというところでしっかりインコースいっぱいへ投げ切るだけの大胆さだ。

 続く4番の李大浩に対しては初球、アウトローのいいところにスライダーを投げ込むも、これがボールと判定されるや、2球目はキレのあるストレートをアウトコースいっぱいに決める。このストレートにバットを出せなかった李大浩は、3球目、やや抜け気味に入ってきた高めのスライダーを強振、ショートへと打ち上げた。これでツーアウト。

 この場面でのポイントは2球目にある。139キロのストレートは、低めいっぱいというわけではなかった。高さはベルトあたりだったのだが、コースは外角いっぱい。それも腕をしっかり振り切って投げられた分、キレがあったから、140キロに届かなくても李大浩はこのストレートにバットを出せなかった。

 そして、5番のアーロム・バルディリスはすごく調子がいいとミーティングで報告されていた。ここで斎藤がさらにギアを上げる。

「ポイントになる選手が何人かいましたけど、相手を乗せないように、とくにバルディリスを抑えようということで投げてました」

 初球、力が入ってストレートが高く浮く。

 2球目、アウトコースにしっかりスライダーを決めて、1-1。ここは李大浩とは逆に初球、キレのあるストレートが高めに唸りを上げた直後の、124キロのスライダーが効果的だった。コース、高さともに甘く見える球ではあったが、緩急を生かしていたこともあって、バルディリスはバットを出せない。こういう場面でいかにも簡単にストライクを取れるのが今年の斎藤の強みだ。

 そこへ3球目、今度は一転、インコースいっぱいの厳しいところへストレートを投げてファウルを打たせ、追い込んだ。好調のバルディリスを相手にインコースへ投げ切ったこのコントロールも称賛に値する。試合後の斎藤がこう言った。

「この前の試合ではコースを狙える体のバランスではなかったんですけど、今日はある程度、思い通りにいったかなと思います」

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