【プロ野球】田中将大との対決を前に、斎藤佑樹がつかんだ揺るぎない自信 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 試合後、報道陣に囲まれた斎藤は、『風がいいようにボールを動かしてくれたと言っていたが......』と問われ、やはりこんなふうに話していた。

「適当に言ってしまったというか......(笑)。内野ゴロが多かったので、そうなのかなぁって思っただけです」

 じつは、動かしていたのは最初からではない。風のせいなら、最初から動いていなければつじつまが合わなくなる。初回から斎藤が投げ込んでいたのは、140キロに満たないフォーシームのストレートだ。

 1回裏の伊志嶺から始まり、1番の伊志嶺にもう一廻りして3回裏を投げ終わるまでに対戦した、打者10人。そのうち7番の大松尚逸を除く打者9人に対し、斎藤はすべて初球にフォーシームのストレートを投じている。とりわけ2回、3番の井口資仁、4番のジョシュ・ホワイトセルという、開幕戦でイーグルスの田中将大を粉砕したふたりに対しても、堂々のストレート勝負を挑んでいた。手元で一伸びする、バットを一押しできるストレート──この配球こそが、今の斎藤と鶴岡がいかにストレートに手応えを感じているかを如実に顕している。しかも、この日も1-1ピッチ(2球投げて1球は必ずストライクを取る)は徹底しており、3回までに2-0(ツーボール、ノーストライク)にしてしまったバッターはひとりもいなかった。吉井理人ピッチングコーチが試合後、こうコメントしていた。

「前回の好調をキープしているね。今日はストレートがよかった」

 4回以降、二廻り目に入ると、斎藤は初球の入り方を変えてくる。フォーク、カーブ、スライダーなどの変化球を使い始めたのだ。1点を取ってもらえば追いつかれ、また1点突き放せば追いつかれ、決して褒められた展開ではなかった。しかし6回表に3度目のリードをプレゼントしてもらった、その裏。三廻り目に入ったマリーンズ打線に対し、斎藤が明らかにストレートを動かし始める。

 ホワイトセルが、サブローが、ストライクゾーンに入ってくる130キロ台中盤のまっすぐを捉えきれない。エラーで出したランナーにも動じることなく後続を断ち、6回を投げ終えて、ついに斎藤は1点のリードを保つことに成功した。そして7回を終えて、まず成瀬がマウンドを下りた。斎藤もこの回限りで交代となったが、ふたりのこの日のピッチング、数字は極めて似通っている。成瀬が7回、打者27人に対し、被安打5、奪三振2、与四球1、失点3。一方の斎藤は7回、27人の打者に被安打6、奪三振3、与四球1、失点2。唯一、対照的だったのが球数で、成瀬が115球を要したのに対し、斎藤はわずか84球。1-1ピッチの徹底と、かわすことなくストライクゾーンの中で勝負し続けた証である。開幕戦という特別な舞台で上げた1勝目に続き、ローテーション投手としての日常の中で挙げた2勝目は、斎藤にとって1勝目に勝るとも劣らない、価値のある白星となった。

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