【プロ野球】阪神・和田監督は3つの『大命題』をクリアできるのか? (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 和田監督も一軍、二軍で継続的に阪神の選手たちを見続けてきた。鳥谷の4番という発想も、そうした「経験から来る蓄積」の一端に過ぎない。ただし、生え抜き監督だけに、足かせも少なくはない。

 前出の関係者が言う。

「例えば金本の処遇。外様監督なら金本放出を就任の条件にするかもしれない。それほど起用が難しい存在になっています。正直、いなければ若手をどんどん起用して競争させることができる。しかし和田監督にはそれが難しい。これまで金本が阪神にどれだけの貢献をしてきたかを肌で感じ、理解しているからです」

 性格的には秀吉でも、生え抜き監督だけに金本に関しては「鳴くまで待つ」ことを選ばねばならないかもしれない。それ以外でも、内情を知るほど、強引に動けないこともあるはずだ。近年、世代交代が叫ばれつつ、実を結んでいないことも、コーチとしてどのように見てきたのか。

「投打ともに若手の台頭が必要な現状ですが、特に待望するのは和製大砲です。例えば5年目、22歳の森田一成や、2年目19歳の中谷将大などの長距離打者は、和田政権のうちに開花させ、一本立ちさせなければならない。投手も今、エースと呼ぶべき存在がいない。抑えの藤川球児も、今オフにはFAで念願のメジャー挑戦を考えています。そうしたチームの軸となる選手を、和田監督の時代に育てなければならないのです」(前出チーム関係者)

 無論、チーム編成はドラフトが基盤にあり、監督だけに責任を押しつけることはできない。しかし阪神のファンは、監督に猶予を与えることはない。

「戦力的には他チームと比較しても、まだまだ見劣りはしません。昨季までの真弓監督時代は、選手との意思疎通を怠ったためにチームがバラバラの状態になった。でも和田監督になってチームは再びまとまってきました。それは生え抜き監督としての良さが働いたと見ても良いでしょう」(テレビ局関係者)

 それだけに、優勝争いも必須条件となる。優勝争いに加わりつつ、若手を育て、かつベテラン陣の処遇にも気を配る。率直に言って、新人監督の任を超えている。しかし、いやだからこそ、生え抜きの和田監督に期待したいのだ。はたしてホトトギスを鳴かせることができるのか。鳴かせられる環境作りができるのか。

 そうした意味でも、今季の阪神は極めて重要なシーズンを迎えようとしている。

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