【プロ野球】
投高打低に終止符? 導入2年目『統一球』に異変あり!?

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 この村田の意識する"押し出す感覚"とは、昨年、統一球をものともせず48本塁打を放った西武の中村剛也が心掛けていたスイング感覚だ。とらえるポイントを前に置き、押し出す(または押し込む)というもの。

 各チーム、選手たちが統一球の対策を進めている中、あるパ・リーグ球団のスコアラーはこんな話をしてくれた。

「道具の変化もあるのでしょうが、試合を見ていて、打球が当たった瞬間(初速)の飛びが、昨年の感覚と違うような気がするんですよね。要するに、ボール自体が違っているんじゃないかと......」

 じつは、「飛ばないボールが飛びはじめている」という声は、すでに昨シーズン後半から出ていた。「メーカー側も『規定の範囲内で、縫い目の幅や高さ、糸の締め方によって、多少の反発の違いが出る』と言っていました。そこで"飛ばない中での飛ぶボール"を指定して注文するようになったチームもあったんです」(スポーツ紙デスク)。

 とはいえ、以前のように高反発になったわけではないので、劇的に飛距離が変わるとは考えにくい。ただ、その一方で統一球導入2年目を迎えて「打者の技術が向上している」という意見もある。

「単純に打者が慣れてきたというのもあるんですよ。一昨年までならバットの芯を少々はずしても飛んでいた打球が、しっかり芯でとらえないと飛ばないと自覚した。そうして試合を重ねていくうちに、打者のスイングの精度が上がったというのはあると思います。いずれにしても今季は、昨年のような投高打低ということはなく、ロースコアの試合も減るような気がしますね」(前出パ・リーグスコアラー)

 阪神の藤川球児も、「去年だったら届かなかった距離まで今年は届いている。用心せんといかんな」と言うように、昨年までとは飛びが違うことを敏感に感じている。

 ただ、ある投手は次のように語る。

「飛ぶ感覚が去年よりも変わったのは確かです。だからといって、すべての打者がまたガンガン打つようになるはずもない。要するに、抑えるべき打者、警戒すべき打者にきっちりと投げることができればいいんです」

 さて、すべての投手がそうできればいいのだが......。どうやら今シーズンは昨年より空中戦が多くなることだけは間違いなさそうだ。

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