【プロ野球】ソフトバンク三軍に、将来有望な逸材たちがゴロゴロいた! (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 馬原が引き上げたあと、同じ場所でキャッチボールをはじめた選手がいいボールを投げている。ボールの回転に加速がついて、ぐんぐん伸びる。振りかぶって腕を振る一連の動作のしなやかさ。パチッと音が聞こえるような鋭いリリース。だれだ、このピッチャー...?

 背番号2......? うそ、今宮だよ!

 メジャー挑戦によりチームを去った川崎宗則の後継者として期待されている新鋭の遊撃手、今宮健太だ。170センチそこそこの小柄な体なのに、大分・明豊高時代は甲子園で150キロをマークした快腕だった。彼の高校3年の6月、「最後の夏」の直前に全力投球を受けていた。

「相変わらず、いいボール投げるなあ......中継ぎぐらいなら、いつでもいけるだろ」
思わず声をかけた。

「ピッチャー、やりたいっすね」
ちょっと遠くを見るような彼のつぶやき。

「そうだよなぁ、ピッチャー、大好きだったもんな......」
つい、余計なことを言ってしまった。軽率な"悪魔のささやき"を一瞬悔いた。

「ダメ、ダメ。いつまでもマウンド引きずっていたらダメだよ。ショート取らなくちゃ」

 ポンとひとつグラブにボールをたたきつけて、もう一度遠くを見るようにした今宮は、「うん」と大きく頷(うなず)いた。

 雨が上がって、サブグラウンドでノックが始まる。ショートの定位置に4人の選手。背番号129の牧原大成(19歳/熊本・城北高)の動きがひと際目立つ。ノッカーが放つゴロに軽快なフットワークで寄り添い、スイッとすくい捕って、スナップスローで一塁へ。動作がなめらかに連動する。育成2年目、昨季1年の積み上げてきたものが伝わる。一軍で何百試合も守ってきた先輩の動きのほうが劣って見えてしまう。自分が子どもの頃からプロでやっている先輩とノックを受けながら、偉そうにしているのがまたいい。

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