【プロ野球】T-岡田、逆襲の誓い「ホームランは昨年以上にこだわっていく」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

 年明けにT-岡田とゆっくり話す機会があった。なぜ中村剛也だけが48本ものホームランを打てたのかという話題になった時、彼は「いいポイントで打っていたんでしょう」と言った。そして落合博満がテレビで語っていた「中村がホームランを打てた理由」の話を持ち出すと、T-岡田は熱心に耳を傾けてきた。

 落合は昨年の中村について、「ボール球にあまり手を出してなかったんじゃないの?」と前置きした上で、「自分の打てるボールだけを打つんだ、と徹底していた。だから統一球の影響を受けなかったんだと思う。それに比べ、成績を落としたバッターはほとんどがボール球に手を出していた。その差」と続けた。シンプルだがじつに納得の言葉だった。落合の言う「俺が打てるボールを打つ」とは、「芯で捉えられるボールを打つ」ということでもある。実際、各バッターから「芯で捉えたら飛距離は変わらない」という言葉をよく聞いた。

 対して昨年のT-岡田は、当てるのがやっというボールに手を出し続けた。数字が落ちるのは当然だった。そして打席に向かう際、コーチ陣からたびたび次のような言葉を耳打ちされていた。

「低目には絶対手を出すな!」

 しかし、手を出すなと言われれば言われるほど意識してしまい、手が出てしまう。思いとは逆の結果に、本人も周囲も苛立ちだけが残った。「ここ」に問題があることは、誰よりもT-岡田自身がわかっている。キャンプイン直前にも、「去年は低目に手を出したらいけないとわかっていても止まらなかった。でも、あのボールゾーンを何とか我慢できればかなり変わってくると思いますし、そこは意識してやっていきます」と、自らに言い聞かせ、宮古島へと向かった。

 先の落合の言葉をある時、門田博光に伝えたことがある。日本歴代3位の567本塁打を放ったホームランアーチストも、やはり大きく頷(うなず)きこう言った。

「イエス、その通り。ホームランにならんコースをいくら振っても一緒。打てる球だけ打つからホームランは増える。僕もそうやった。9分割のコース中、外3つがきたら「ゴメンなさい」でベンチに帰る。でも、それより内にきたらスタンドや。気持ちと技術の部分で、そういう待ち方ができるかやろうね」

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