【プロ野球】新フォームで挑む由規の決意
「大卒1年目には負けたくない」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

キャンプこそ出遅れた由規だったが、2月27日の練習試合で151キロをマークするなど、好調をアピールキャンプこそ出遅れた由規だったが、2月27日の練習試合で151キロをマークするなど、好調をアピール 不安だらけのスタートだった。

 昨年は9月3日の巨人戦を最後に右肩痛で登録を抹消され、残りのシーズンを棒にふった。治療とリハビリのため、11月までブルペンに入れない日々。高校時代は「投げていないと投げ方を忘れそうで不安」と、ほぼ毎日ブルペン入りしていた由規にとって、これだけ長い間投げられないのは生まれて初めての経験だった。さらに今年1月のキャンプイン直前、左足甲にバイ菌が入って発熱。2日間入院するなど、調整の遅れを余儀なくされた。

 そして由規にはもうひとつの不安があった。それが投球フォームだ。オフに合同で自主トレを行なった捕手の相川亮二のアドバイスで、投げる時に顔の前まで上げていた左手を肩のラインまで下げるようにした。ただ、高校の時から慣れ親しんだフォームを変えるのは、想像以上に大変だった。左手の高さを気にしてしまうと、右手の動きまでスムーズにいかなくなる。案の定、キャッチボールから首をひねる姿がたびたびあった。

「左手の高さを変えることで、右腕が出てくるタイミングが違うんです。ここを意識しちゃうとダメかなと。あまり低くやりすぎると頭も突っ込むし、顔より低くというイメージぐらいでいいのかなと思っています」

 このフォーム改造は思わぬ副産物をももたらした。昨年まで課題だったインステップがなくなり、余計な動作も減ったのだ。シーズンを通して投げることを考えれば、身体への負担も少なくなる。

 だが、その一方でこのような考えも頭をよぎったという。

「バッターへの見え方も変わるし、以前よりも威圧感がなくなってしまうんじゃないかと」

 これまでのように荒々しいフォームで打者に威圧感を与えることを重視するのか、それともコンパクトなフォームで身体への負担を減らすのか。由規の考えはこうだった。

「1年間投げ続けられる方って気がするんですよね。去年は大事なマウンドにいられなかった。実際、まだ(1年)もったことないですからね。(フォームを変えて)球威が落ちるようなら変えなきゃいけないですけど......」

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