【プロ野球】ソフトバンク、川﨑宗則なきあとの「新1・2番コンビ」は? (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そうなれば2番打者探しだが、期待の若鷹が勢いよく名乗りを上げた。3年目を迎える今宮健太(右投右打)である。

 明豊高(大分)では3度甲子園に出場し、投げては最速154キロ、打っては高校通算62本塁打を放ったスター選手だったが、身長171センチ、体重67キロの小柄な体ではプロでスラッガーとして生きていくのは無理と判断。1月の自主トレでは「そういうプライドは捨てました」と言い切った。

 キャンプでのフリー打撃を見ても、昨年はただ振り回すだけだったが、今年はゴロを転がしたり、右方向へ運んだり、テーマを持ってスイング。「2番を打ちたいという気持ちはあります。バントや右打ちなどチームバッティングの大切さは分かっています。昨年、ポン(本多)さんが送って内川(聖一)さんが走者を還すという形を見て、ソフトバンク打線はすごいなと感じていましたから」と今宮は言う。

 昨年11月のアジアシリーズ、川﨑が欠場した試合で今宮はスタメン起用されるなど、秋山監督の期待も大きい。今宮自身も、「これだけのチャンスはめったにない。3年目だけど、野球人生の中でこんなチャンスは二度とないという気持ちでいきます」とレギュラー獲りに意欲を燃やす。もうひとりのレギュラー候補だった明石健志が今キャンプでB組スタートと出遅れたこともあり、現時点では今宮が開幕スタメンの大本命である。

 もし、今宮が希望する「2番」にこのまますんなり収まれば、1番・本多、2番・今宮の「新1・2番コンビ」誕生となるが、その場合、本多を2番から動かすリスクも考えなければいけない。本多は2年連続でチームトップの犠打数を記録。10年には球団新記録となる50犠打をマークし、翌11年には53犠打とさらに記録を更新した。「つなぐ野球」を身上とする秋山野球において、「2番・本多」の担う役割は途轍もなく大きかった。

 そう考えると、本多を2番に固定して、新たなトップバッターを探すという選択肢もある。そこでまず名が挙がるのが、長谷川勇也だ。昨季の打率は.293だが、出塁率.379はリーグ3位。チーム内では、首位打者を獲得した内川聖一(.371)を上回る。長谷川の特長は選球眼の良さ。昨季47四球は特筆すべき数字ではないが、9.7打席にひとつの割合で四球を選んでおり、昨年のトップバッター・川﨑の18.2打席をはるかに上回る。長谷川自身は「打順は監督が決めること。自分では意識しない」と素っ気ないが、リーグ屈指の「相手投手が嫌がる打者」が1番に座る構想は面白い。

 また、意外性でいえば松田宣浩だ。昨季25本塁打、83打点はチーム二冠王のスラッガーだが、27盗塁をマークしている俊足の持ち主でもある。09年に8試合、10年に1試合、1番打者の経験があり、09年9月26日の日本ハム戦(ヤフードーム)では先頭打者ホームランを放った。

 秋山監督は「現時点では何も。周りが考えているだけ(笑)」とケムに巻くが、「新1・2番コンビ」でチャンスを作り、内川以降の中軸で還すという得点パターンの確立――つまり本多の起用法がソフトバンクの命運を左右するといっても過言ではない。オープン戦の頃にはその答えは出ているだろう。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る