【プロ野球】充実の2年目、斎藤佑樹がブルペンでつかんだ手応え (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 貫禄である。

 斎藤がこの1年で押し上げた天井は、こちらが想像する以上に高くなっているのだろうか。初日にストレートだけを投げた理由について、彼はこんなふうに説明した。

「ハイ、(初日はストレートだけでいこうと)イメージしてました。去年の後半、まっすぐがよかったんで、今年はこのまっすぐで行くんだという、このシーズンへの気持ちを(自分に)強く感じさせたいと思ってました」

 では、その手応えを彼はどこで感じているのだろう。

「ラインが見えます。指先からキャッチャーまでのラインが見える。去年はバラバラだったんですけど、今年はそれが見えるんです」

 ライン──それは、物理的なボールの軌道やコントロールのことではない。斎藤の頭の中に描かれるイメージのことだ。イメージを描いてから投げられるか、否か。これは、頭の中でピッチングを終えることができてしまう斎藤にとっての生命線でもある。

 オフの間、シャープでありながら厚みのある体作りを目指して、トレーニングを続けてきた。初動負荷の理論を学び、体の使い方が変わったという実感も得た。グラブの使い方を含めて試行錯誤が続くフォームに関しては、変えたというより、変わってきたといった方が現実に近い。一緒にトレーニングをしたイチローには、バッティング練習で何度も投げて、手応えを感じると同時に、自分の中にある天井をもっと上まで押し上げた。

 年男は、節分に豆を撒く役割を担う。

 節分には2日早かったが、キャンプ初日、今年24歳になる斎藤は、豆ならぬボールを存分に撒いた。年の数よりひとつ多い数の豆を食べると、丈夫になると言われる。

 24+1=25。

 吉井コーチが言った。

「先発25試合、すべて7回を投げれば……」

 2年目に向けて、準備は万端と見た。

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