【プロ野球】阪神・一二三慎太、2年目の打者転向に迷いなし! (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Nikkan sports

 一二三は投手として注目を集める一方で、打撃に関しても非凡なセンスを見せていた。東海大相模の5番を任された夏の甲子園では5割を越える打率(21打数12安打)を残し、水城(茨城)戦では本塁打も放っている。神奈川県内のライバル・横浜高校の小倉清一郎コーチは、高校時代の"打者"一二三についてこう証言する。

「最も警戒した打者だった。身体能力の高さは、プロのスカウトの誰もが認めていたと思います。大きいのが打てるからね。アウトコース高めに甘いボールがいくと危険だったけど、インコースはリーチが長い分、詰まることがあったし、変化球に体勢を崩されることもあった。将来性のある選手であることは間違いありませんが、高校時代は身体がまだできあがっていないのに、スイングスピードが速く、野球センスに身体が追いついていない状態だった。うち(横浜高校)の卒業生の多村仁志(現ソフトバンク)もそうだったけど、こういうタイプはプロに入って身体を壊しやすい。それを心配していたんだ」

 プロ野球のあるスカウトは、今後の"野手"一二三について、期待を込めて次のように明かす。

「肩の状態が思わしくない中で、早めに区切りをつけたのは正解なのではないでしょうか。身体能力が高いので、鍛えれば伸びる余地はある。ただ、外野手としてはそれほど足があるわけではないし、肩もどこまで治るかわからない。となると、打撃で勝負するしかない。まずはどれだけ二軍で経験を積み、実績を残せるかでしょう」

 一二三は2年目のシーズンを、母校の東海大相模で始動し、今年入団した新人選手たちの合同自主トレにも参加した。原点に回帰し、遮二無二、野手として生き残りを図ろうとする彼の決意が込められた行動だった。

「もうピッチャーに未練はありません」

 一二三の身体能力の高さは誰もが認めるところ。かつ、投手に専心してきた彼にとって、打撃技術の「伸びしろ」は多く残されているだろう。とにかく一二三は、投手としての過去の栄光やプライドをかなぐり捨ててゼロからのスタートを切った。投手断念が挫折ではなく、「転機だった」と思える日がいつか訪れることを期待したい。

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