WBCで侍ジャパン入りのヌートバー「誰かの邪魔をしたり、失礼なことはしたくない」。その素顔と数字が表す期待できる理由

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 1月26日、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む日本代表メンバー30人が発表された。

 WBCは各国のスーパースターが集うステージであるとともに、新スター候補を生み出す舞台でもある。"侍ジャパン"の中では、日系人選手として史上初のメンバー入りを果たしたラース・ヌートバー外野手がその有力候補だろう。MLBのセントルイス・カージナルスでプレーする25歳は、紛れもなく大きな魅力を秘めたプロスペクト(有望選手)だからだ。

カージナルスで流行した「胡椒挽き」パフォーマンスを行なうヌートバーカージナルスで流行した「胡椒挽き」パフォーマンスを行なうヌートバーこの記事に関連する写真を見る「正直なところ、自分のことを"ゼロ・ツール・プレーヤー(=主だった武器のない選手)"だと思っている。自分には特別な長所はない。(大谷)翔平やマイク・トラウトなどのように突出した能力があるわけではないので、フィールドで一生懸命プレーし、全力を尽くすだけ。そして最高のプレーヤーになろうと思っている。侍ジャパンも、そんな僕を受け入れてくれたら嬉しいね」

 現地時間1月15日、セントルイスの本拠地ブッシュスタジアムで行なわれたファンイベントに出席した際、ヌートバーは謙虚にそう述べた。しかし、本当に"ゼロ・ツール・プレーヤー"だったら、栗山英樹監督からチーム入りを望まれることはなかったはずだ。

 ヌートバーの特殊な経歴に関しては、日本でもさまざまな形で報道されている。日本人の母、オランダ系アメリカ人の父のもとに生まれた日系人で、「タツジ」という日本名も持っている。日本食が大好きで、少年期の朝ごはんには納豆ご飯と梅干しを好んだという。2006年の日米親善高校野球大会では、日本代表チームのメンバーを自宅にホームステイさせ、田中将大や斎藤佑樹と写真を撮ったこともあったという。

 そんなストーリー的な面白さだけでなく、当然ながらヌートバーは確かな実力も備えている。

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