今年の「投手・大谷翔平」はどこがすごいのか。球速・制球力もアップ、スライダーはバットに当てるのも困難 (3ページ目)

  • 澤良憲●取材・文 text by Sawa Yoshinori
  • photo by スポニチ/アフロ

自信がもたらした闘争心

 それによれば、昨年4月4日から6月30日までの12登板では与四球率が14%だったのが、昨年7月6日から今年4月12日までの12登板では3%にまで減少している。フリードマン氏も制球についてこう語っている。

「彼は今、非常に高い水準を維持しています。今季の制球力は卓越しており、三振と四球の比率は6.5回で1個未満。つまり、与四球を1試合につき2個未満に抑えているということだ。これは、決して簡単なことではありません」

 フリードマン氏は続けて、配球の変化について次のように話した。

「これまでの大谷選手は、決め球にカーブを選ぶことが多かった。しかし今は、スライダーやスプリットなど組み合わせを変えています。それができるのは、彼が非常に優れた武器を多く持っているから。ストレートはもちろん、空振り率がそれぞれ50%を超えるスライダーとカーブ、そして球界最高のスプリット。たとえ、どれかの球種で球速や制球に苦労することがあっても、他の球種に頼ることができる。彼はそれらをうまく組み合わせています」

 フリードマン氏によれば、ボールの質が向上した上に決め球の選択肢が増えたことで、いかなる場面でも自信をもって勝負ができており、「それが"闘争心"にもつながっている」と話した。

「大谷選手はランナーを抱えている時にギアを上げています。得点を与えることを嫌い、それは彼の表情に出ています。そのような場面を抑えられると彼は雄叫びを上げますが、自分の配球がうまくハマり、勝負を制しているから出てくる感情なのだと思います。そこが、これまでとは大きく違う点だと私は考えています」

 最後に、フリードマン氏は大谷がある時点からフォームに変化をつけていることを指摘。これまでの大谷はセットポジションの際、グラブを胸よりやや上で構えていた。しかし、4月20日のアストロズ戦からはグラブをベルト付近で構えるようになった。

 フリードマン氏は、「グラブを低い位置で構えると手の動きは小さくなり、打者からは握り(球種)が見えにくくなる」とそのメリットを説明する。大谷が実際にそれを狙っているかは「あくまで推測だ」と断ったが、それ以降の好投を見れば、プラスに働いていることは明らかだ。

 このように今季の投手・大谷は昨季から大幅なアップデートを果たし、シーズン序盤から歴然とした違いを見せている。今後もこの調子を維持できれば、大谷はエンゼルスの8年ぶりのプレーオフ進出の大きな原動力になるだろう。

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