なぜ9イニング制? コーチャーズボックスの意外な起源は? など。つい話したくなる野球豆知識5選 (2ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • photo by Kyodo News

【2】半世紀前のマウンドは今より1.5倍の高さ

 ピッチングは放物運動だ。高から低へ向かって投げるほうがより球威が増す。直径18フィート(5.5m)の中に築かれた小高い山、ピッチャーズマウンド(以下:マウンド)の高さは投げやすさ、球速に影響する。これは投手と打者の実力が均衡し、野球が白熱したスポーツであり続けるためにもっとも重要な規定のひとつだ。現在のマウンドの高さは10インチ(25.4cm)。今から半世紀ほど前のある出来事がきっかけとなり、この高さになったそうだ。

「1968年当時のマウンドの高さは、15インチ(約38cm)もありました。このシーズンは史上空前の投高打低。ナショナルリーグでは、セントルイス・カージナルスのボブ・ギブソンが1.12という驚異的な防御率を記録。アメリカンリーグでもデトロイト・タイガースのデニー・マクレインが31勝6敗。34年ぶりのシーズン30勝でした。メジャーリーグ機構はこの事態に危機感を覚えたのです。野球がおもしろくなくなってしまう、と。1920年代のベーブ・ルースの活躍以降、野球の華はホームラン。胸がすくような豪快な一発や点を取り合うスリリングな展開で人気を高めていきました。しかし、これだけ打者が抑え込まれてしまうと、野球人気の存続が危ぶまれる......。というわけで、目をつけたのがマウンドの高さだったのです」

【3】野球の実況中継から大統領になった人

 1934年のシカゴ・カブスとセントルイス・カージナルス戦。野球の実況は、ティッカー・マシンという電信装置から送られてくるテープの記録をもとに行なわれていたが、9回に機械トラブルが起きてしまった。スタジアムの状況がまったくわからない。しかし、アナウンサーは試合を目の当たりにしているかのような名実況を続けたというのだ。

「この人物こそが、のちのアメリカ合衆国第40代大統領、ロナルド・レーガンです。幼少期から話し上手でユーモアのセンスがあり、生まれ育ったイリノイ州のシカゴ・カブスのアナウンサーに。ラジオの実況にいいヤツがいると目をつけたワーナーブラザーズと契約し、俳優に。ところが、セリフは棒読み。俳優としては鳴かず飛ばす。本人もそれを自覚したのか、そこからカリフォルニア州知事、さらには大統領になりました。史上もっとも演説のうまい大統領と言われたように、野球の実況で培ったしゃべりの技術が政治家となって最大限に生かされたわけです」

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