筒香嘉智がアメリカで感じた相手へのリスペクト。一流選手になるには人格者であるべきか、「スポーツマンシップ」を考える (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【東京五輪の金メダリストたちは?】

 中村理事は著書『スポーツマンシップバイブル』で、スポーツマンシップの要諦として「尊重」「勇気」「覚悟」の3つから説明している。

「自分以外の人を受け入れましょう、ということが『尊重』です。『勇気』というのは、失敗したら嫌とか、恥をかきたくないという恐れは、僕らから行動しようという気持ちを奪っていきますが、失敗しても学びが大きければ自分は成長できる。それが『勇気』です。

 勇気は自分に対するもので、尊重は他人に対すること。どちらが大切というわけではなく、両方必要です。人に優しく、自分に厳しくというバランスを取っていくのはすごく難しいですが、それを実践していくという『覚悟』が大事。自分以外と自分自身という、並び立たないものを並び立たせようとするところにスポーツの価値がある。これがまさに『覚悟』です」

 中村理事がスポーツマンシップの重要性を説くと、選手や指導者から「そんなことを言っていたら勝てない」と否定される場合もあるという。その背景には勝利至上主義や、負ければ終わりというトーナメント制の弊害もあるが、本当に突き抜けていくトップアスリートは「スポーツマンシップは大事」と口を揃えるという。中村理事が続ける。

「試合で勝ちにいきながら、自分の内なる戦いにも向き合う。その姿勢は間違いなく一人ひとりを強くしていきますし、そういう人たちが集まっているチームは間違いなく強くなっていく。東京五輪の全メダリストにインタビューをさせてもらいましたが、柔道の大野将平選手も、侍ジャパンの田中将大選手も、世界のなかで突き抜ける人はスポーツマンシップを持ち合わせていると感じました。

 逆に言えば、人格者でなければ勝ち続けることは難しい。『自分だけよければいい』という選手は、1回は勝てるかもしれませんが、そうした態度ではスポンサーも含めて周囲が離れていくでしょう。人を愛する力が強いから、愛され力も強いのだと思います」

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