デストラーデから見た今季の大谷翔平は「ベーブ・ルースどころじゃない」。二刀流として完全開花した契機も分析 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文・撮影 text & photo by Sugiura Daisuke

【手術がポジティブにはたらいた】

 説明不要かもしれないが、ジョーダンはいまだ"史上最高のバスケットボールプレイヤー"の称号をほしいままにするNBAの超スーパースターである。1990年代にブルズを6度の優勝に導き、「神様」と呼ばれた。昨年、ジョーダンとブルズにスポットライトが当てられたドキュメンタリーフィルム『ラストダンス』が大ヒットし、再び脚光を浴びることにもなった。

 デストラーデの言葉どおり、ジョーダンは10度も得点王に輝いただけでなく、NBAオールディフェンシブ・1stチームに9度も選ばれた。1988年には最優秀守備選手に選出されるなど、ディフェンス面でも高い評価を勝ち得た最高の"2ウェイプレイヤー(攻守両面で秀でた選手)"だった。そういった意味で、投打両方の貢献でメジャーリーグを震撼させた大谷とも共通点がある。

 大谷がメジャーでスーパースター級の実績を残したのは今季が初めてで、米スポーツ史上最大級の偉人であるジョーダンとの比較は時期尚早かもしれない。ただ、"日本球界史上、最高の助っ人"とも称されたデストラーデにそう思わせるほど、2021年の大谷の活躍はインパクトがあったのだろう。

 続いて今季、なぜこれほどの爆発的な活躍が可能になったのかという問いに関して、デストラーデは「大谷がトミー・ジョン手術を受けたことがポジティブにはたらいた」という持論を述べた。

「2018年に(右肘を)手術をしたことが、大谷にとって最善の結果をもたらしたのだと思う。日本での高校時代や日本ハムでプレーしていた頃を思い返しても、大谷は投手が"第1"で、打者としては"第2"だった。それがケガをしたあとは、打撃に専念せざるを得ず、1年半にわたって打つだけだった。マイク・トラウト、アルバート・プホルスと同じチームで、打撃コーチの指導も受けた。こうして打撃に専念する過程で体もより大きくなり、いい体格になったね。

 日本での最高のシーズンも、エンゼルスでの1年目も22本塁打だったけど、今の彼はメジャーでも『モンスター』と呼べる打者になった。同時に、投手としてもまだ100マイル(約160km)が投げられている。故障期間中に打者としても力をつけたおかげで、今では投打の両方で均等に力が出せるようになったんだ」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る