菊池雄星と澤村拓一はもっと評価されるべき。斎藤隆が「隠れたすごさ」に着目 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

 英語で「cut fastball」と言われるこの球種は、フォーシームから人差し指と中指を少しずらして投げ、ファストボールを打者の手もとで絶妙に変化させて打ち取っていく。菊池は一定以上の速さと強さを備えたカットボールを中心に、ストライクゾーンの中で勝負した。それが安定したピッチングにつながり、「メジャーでもトップクラスの左腕投手」という評価を獲得した。

 ところが、オールスター明けの後半戦は思うような投球をできない試合が増えていく。7月17日のロサンゼルス・エンゼルス戦から9月18日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦の12試合のうち、6イニング以上投げたのはわずか3度で、白星は8月3日のタンパベイ・レイズ戦で挙げたひとつのみだ。

 そこで、菊池は攻め方をアップデートする。投球割合におけるフォーシームを増やしたのだ。8月31日のアストロズ戦では7回無失点の好投を見せたなか、95球のうち約65%がストレートだった。

 続く9月6日のアストロズ戦は立ち上がりから制球を乱して2回途中で降板したものの、同12日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦では5回1失点と好投。その要因について、菊池はこう振り返っている。

「(捕手のトム)マーフィがとくにカットボール中心に配球してくれて、勝負どころではストレートっていうリードに助けてもらった」(翌日の『サンケイスポーツ』電子版より)

 こうした投球について、斎藤氏が見解を語る。

「小細工して通用する世界ではないと、気づいたんじゃないでしょうか。振ってくるバッターに対して、今までは変化球で何とかしようとしていたところを、真っすぐで勝負するようになった。それが一番の成長だと思います。

 そこに気づけるか、気づけないか。気づけたうえで、真っすぐを投げて勝負になるか、ならないか。左で150キロを超えるピッチャーは、なかなかいません。雄星は気づいたんじゃないですかね、そういう勝負の仕方を」

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