ダルビッシュ、なぜ勝てない。斎藤隆「周りに言えない理由を何か持っているのか」 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

 並進運動で前に行ったあと、指先でリリースしていくまでの回転運動で支点になる。そこに痛みが走ることの大変さについて、斎藤氏が投手視点で解説する。

「左の股関節は、投球動作でエネルギーを爆発させるうえで、最大の出力が発揮される時に使われる部位です。その際に感じる痛みは、尋常なものではないと思いますね。察するに余りあります。

 股関節の痛みは外側や内側とさまざまありますが、とにかく厄介です。数カ月という長いスパンで見ると、経験上、ひとつのひずみが大きな変化になっていったとしても不思議ではありません」

 日米通算17年目の今季は、ダルビッシュにとって例年以上に期待を寄せられたシーズンだった。

 コロナ禍で短縮された昨季、日本人初の最多勝に輝き、どんなジャンプアップを見せてくれるのか。メジャー4球団目となるパドレスにエース格として迎え入れられ、オープン戦から好調を維持した。斎藤氏も「リラックスした状態から投げにいく瞬間、リリースでバーンって来た感じがヤバイ」と称賛していた。

 一方、球団初のワールドシリーズ制覇を目指すパドレスは近年、補強に力を注いできた。2019年にはマニー・マチャドとFA史上最高の10年3億ドル(約332億円)で契約。2020年オフにはカブスと2対5の大型トレードでダルビッシュを獲得し、2018年サイ・ヤング賞投手のブレイク・スネルも加えた。

 そして、2021年の開幕前にはフェルナンド・タティス・ジュニアと14年総額3億4000万ドル(約360億円)で契約更新。同地区で9連覇中のロサンゼルス・ドジャースを倒すべく、着々と体制を整えてきた。

 そんな球団に加入した意味を、当然、ダルビッシュはよくわかっていたはずだ。

 自身も35歳まで年齢を重ねるなかで円熟味を増し、投手としてまだまだ成長曲線を描いている。そして新天地で開幕投手を託され、以降もすばらしいパフォーマンスを続けた。各メディアではサイ・ヤング賞の候補に挙げられ、オールスターのメンバーにも選ばれた(ケガで辞退)。

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