筒香嘉智が3球団目で成功した理由は? メジャーを渡り歩いた斎藤隆が分析 (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

 対して、ナ・リーグ中地区で首位ブリュワーズに35ゲーム差をつけられるパイレーツは、対照的なカラーだ。それが現在の筒香にとってプラスに働いた可能性があると、斎藤氏は見ている。

「パイレーツはお金をかけずに強いチームを作りたい、という方針のチームです。つまり、成長途上の選手が多い。アンドリュー・マカッチェン(現フィラデルフィア・フィリーズ)みたいに長年在籍した名選手もなかにはいますが、例外中の例外です。アスレチックスと似ていて、若くて無名の選手を使って評価を上げてきたら放出して、を繰り返すチームです。

 筒香がこれまで在籍したのは優勝を狙う球団で、周囲は"チームの顔"みたいな選手たちばかりでした。そのなかで"借りてきた猫"みたいな野球を強いられてきたところもあったと思います。でも、今はのびのびとプレーできている。今シーズン最後の最後に、いいチームに行ったのはラッキーでしたね」

 幸運は向こうからやって来たわけではない。レイズをDFA(40人登録枠から外す措置)、ドジャースでマイナー降格という憂き目に遭い、日本球界復帰を促す声も上がるなか、アメリカでプレーしたいと初志貫徹した。だからこそ、再び日の当たる場所に立つことができた。

 そうした本人の意志に加え、アメリカの豊潤な野球文化も選手が光り輝く土壌にある。斎藤氏自身、36歳を迎えるシーズンに渡米し、マイナー契約からメジャー昇格を勝ち取り、アメリカで計5球団を渡り歩いたからこそ感じることがある。

「それだけ野球をやる環境があるのが素敵ですよね。30チームあるということは、どこかに自分に合うチームがあるのではと思います。あの野茂英雄さんが、最後までいろんな球団を渡り歩きました。筒香もそれくらい決意していたということですよね。本気でアメリカに勝負しに行ったことを自ら証明しました」

 自身の腕を試しに海を渡り、マイナーで磨きをかけて最高峰の舞台に舞い戻った。挑戦を続ける者だけが、翌年以降も再び勝負するチャンスを掴むことができる。

 メジャーリーグで日本人野手の成功例が決して多いとは言えないなか、今季終盤戦で筒香が見せている姿には大きな価値がある。

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