大谷翔平のサイ・ヤング賞は極めて難しい。無双ピッチングで候補と言われるもその理由は? (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

 シーズン中の6月に移籍後、圧倒的な投球を見せた1984年のリック・サトクリフを除けば、サイ・ヤング賞を受賞した先発でイニング数が少なかったのは2018年のブレイク・スネルの180回2/3、2014年のクレイトン・カーショウの198回1/3(ストライキやパンデミックによる短縮シーズンは除く)。最近では投手の貢献度を測るさまざまな指標が生まれ、イニングを稼ぐことが以前ほど重視されていないとはいえ、先発である以上、既定投球回数にも満たないのはやはり大きなマイナスになるだろう。

 投打の貢献を総合してMVP最有力候補なのは妥当だとしても、サイ・ヤング賞の基準はあくまで投手としての働きのみ。二刀流であることが、投手としての評価の助けになるべきではないのは当然である。

 最終的に150イニング程度の投球回数で終わるとすれば、より圧倒的な成績が必要になる。だが、8月19日時点の『Baseball-Reference』のWARで大谷の上をいく、ロビー・レイ(ブルージェイズ/9勝5敗、137回1/3で防御率2.88)、ランス・リン(ホワイトソックス/10勝3敗、123回2/3で防御率2.26)、ゲリット・コール(ヤンキース/11勝6敗、136回で防御率3.04)らを捉えるのは簡単ではない。

 もっとも、たとえ有力候補とまではいかないとしても、地元メディアからそんな声が出始めていること自体が、大谷がとてつもないシーズンを過ごしていることの証明ではある。イニング数は少なくとも、インパクトは抜群。現在、アメリカのファンを大谷以上にワクワクさせている選手はいない。

 そして今後、さらにとてつもない投球を続け、上位との差を詰めていってほしいものだ。疲れも出始める終盤戦にそれをやるのは極めて難しいが、最近の大谷のピッチングの充実度を見る限り、至難の業を実現させても驚くべきではないように思えてくる。

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