大谷翔平のアッパースイングは理想的。アッパースイングが流行した背景と断トツ1位のデータ (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 ただし、すべての選手において「単純にアッパースイングが望ましい」とは言い切れません。極端なアッパースイング、すなわちゴルフスイングのような打ち方だと空振りも多くなるからです。

 シカゴ・カブスのクリス・ブライアントはメジャー1年目の2015年、26本塁打を放ってナ・リーグ新人王を獲得した一方、リーグ最多の199三振を喫しました。そこで翌2016年、ブライアントはコーチ陣やデータ専門家たちのアドバイスを受けて極端なアッパースイングをわずかに修正したところ、ホームランを量産(39本塁打)しつつも三振の数(154個)を大幅に減らし、ナ・リーグMVPに輝いたのです。

 また、メジャーリーグでアッパースイングが増えた要因のひとつとして考えられるのは、ピッチャーの投げる球種やストライクゾーンの変化も影響していると思います。

 2006年頃からメジャーでは、ピッチャー優位の「投高打低」の傾向が強くなりました。そこでMLBは試合を盛り上げるため、ストライクゾーンを狭くジャッジする流れとなり、球審はその分だけゾーンの低目をストライクと取るようになったのです。

 そのストライクゾーンの変化によって、ピッチャーはツーシーム、シンカー、カッターといった沈むボールを多投するようになりました。結果、試合はゴロの打球が増えて、内野陣は極端なシフトを敷くようになったのです。

 すると、今度はそれに対応しようとバッターは打球に角度をつけて、内野手の頭上を越すような打球を意識するようになりました。このようなピッチャーとバッターの駆け引きは、いつの世も終わりがありません。

 さらに、2016年には球審がストライクゾーンの高目を取るようになると、それまでストライクだったツーシームやシンカー、カッターがボールと判定されることが増えました。そしてストライクゾーンの低目に甘く入ってしまったボールを、バッターがアッパースイングですくい上げるように打ち始めたのです。

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