大谷翔平のアッパースイングは理想的。アッパースイングが流行した背景と断トツ1位のデータ

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 メジャーリーグではスタットキャスト導入以前から、強い打球、いわゆる「ハードヒット」を打つ重要性は提唱されていました。1980年代後半にオークランド・アスレチックスの「大砲コンビ」ホセ・カンセコとマーク・マグワイアが台頭するなど、強い打球を飛ばすバッターが活躍するようになったからです。彼らは筋肉増強剤を使用してまで、ハードヒットを武器にボールを遠くまで飛ばしていました。

 それがスタットキャストの導入によって、打球を大きく飛ばすにはハードヒット以外に「最適な打球速度と角度も重要であること」が判明しました。それを表わすようになった指標が、その頃からアメリカでにわかに注目され始めた「バレルゾーン」というものです。

 打球速度と角度の理想的な組み合わせを計算したことによって、ホームランになる確率が劇的に上がるバレルゾーンの領域が判明しました。過去のデータを分析すると、「打球速度98マイル(約158キロ)以上、角度26〜30度の打球が最も高い確率で長打やホームランになる」とわかったのです。

 これらのデータが根拠となって、2010年代後半に革命的な出来事が起こりました。それが「フライボール革命」です。バレルのデータをいち早く採用したヒューストン・アストロズがワールドシリーズを制覇したことで、その理論は一気にメジャーリーグで広まりました。

 バレルという指標を用いて最初に話題となった選手は、昨年ロサンゼルス・ドジャースの3番打者として世界一に輝いたジャスティン・ターナーだったと思います。

 2009年にボルティモア・オリオールズでデビューした当時のターナーは、ゴロを打って出塁するタイプでした。実際、デビュー最初の5年間は2011年ニューヨーク・メッツ時代の4本塁打がシーズン最多で、典型的なグラウンドボールヒッターだったのです。

 しかし、2013年にアメリカ独立リーグのダグ・ラッタという打撃コーチからアッパースイングの指導を受けると、一躍パワーヒッターへと変化します。2016年と2019年にはロサンゼルス・ドジャースで自己最多27本塁打を放つなど、チームを代表する長距離バッターとなりました。

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