「最強」大谷翔平の一挙一動がMLBの話題の中心。監督の起用法に注目 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「What? (なんだって?)」

 ヒューストンのミニッツメイドパークの記者席にそんな驚きの声が漏れたのは、1-1で迎えた8回裏のこと。前述のとおり、この日は先発投手として7回1失点と好投したが、その大谷がライトの守備位置に走っていった。

 この日はバッターとしても6回に1安打を放っていたが、守備にも入って"三刀流"に。接戦の中で、9回に打順が回ってくるスラッガーをもう一度打席に立たせるため、エンゼルスのジョー・マドン監督が奇策を巡らせたのだ。

 結局、大谷の守備機会はライト前ヒットをさばいた1回だけで、守備面の見せ場はなかった。8回裏にはエンゼルスのリリーフ陣が崩れて4点を奪われ、大谷も9回の第4打席では見逃し三振。作戦は実を結ばず、エンゼルスは1-5で敗れた。それでも、試合後にマドン監督が口にした「彼の才能がすべて誇示された」という言葉を否定するファンはいなかっただろう。

 大谷は5月20日のインディアンス戦でも、先発として5回途中に降板するとライトの守備に入り、6回の打席では意表をつくセーフティバントを決めて出塁した。もはや、どんな使われ方をするか、どんなプレーで魅せてくれるかは蓋を開けてみないとわからない。指揮官はさまざまな起用法を試すことができ、見ているファンもさまざまな楽しみ方が可能になる。

 メジャーリーグを代表する知将で、大胆な戦法をいとわないマドン監督は、大谷の力を引き出すのに最適の監督なのかもしれない。過去に「外野4人シフト」「4点差がついた満塁の場面で敬遠四球」といった、常識に囚われない戦術を使いこなしてきたマドン監督は、以前にも投手に一度外野を守らせたあとで再びマウンドに戻した経験もある。

 そんな指揮官が今後、どんな起用法を試してくれるのか。ペナントレースの終盤やプレーオフなどの重要なゲームで、大谷という"最強兵器"をどう使いこなすのか。ア・リーグ西地区で下位に低迷するエンゼルスがポストシーズンに進出することは簡単ではないが、それでも夢は膨らんでいく。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る