投手・大谷翔平も今季は「ヤバイ」。斎藤隆が見た明らかな変化、超一流の証 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

「伝統的に日本で"いい"とされるピッチャーは、重心が体のすごく下にありますよね。日本では決めにいけばいこうとするほど、重心を下げ、ボールを前で離したいというピッチャーが多くいました。

 でも、メジャーのマウンドは固いので、その投げ方だとうまくいかないこともある。ボールを持ちすぎるとリリースのタイミングが合わなくて、いわゆる"吹ける"ボールになります。抜けないようにすると、今度は指にかかってワンバウンドになる」

 斎藤氏の説明によると、日本のマウンドは柔らかいため、前足を踏み出してからリリースするまでに体がブレやすく、下半身を締めるような動作が必要になる。対してメジャーのマウンドは固く、前足を踏み込めば、そこから動かない。渡米した日本人投手はこうした違いに対応し、投げ方を調整していくことを求められる。

 その副産物とも言えるのが、日米で異なるテイクバックの大きさだ。一般論として、アメリカ人投手のほうがテイクバックは小さい傾向にある。その理由について、斎藤氏はこう説明する。

「アジア系の選手は、欧米の人より体幹が長いですよね(=足が短く、上半身が長い)。日本のマウンドが柔らかいのは、日本人が体幹を使い、いわゆる"うねり"を使うために理想系だということです。

 一方、メジャーの固いマウンドで、アメリカ人のように胴の短い人の投げ方を見ていると、単純に体をバタンと倒し込んでいるだけなんです。倒し込むためにはテイクバイクをコンパクトにして、パッとタイミングを合わせるのが一番合理的です」

 アメリカ人投手のように小さいテイクバックで投げるメリットについて、斎藤氏が続ける。

「テイクバックを小さくすると、そのぶんバッターを見られるし、投球動作中にホーム方向へ体を横に移動する時間(=並進運動)もより長くとれます。一方、テイクバックを大きくして腕をひねっていると、リリースまでのどこかでタイミングが合わなかった場合、日本みたいにマウンドが柔らかくないので、ひざで体を送り込んだりして調整できない。

 それでリリースが合わなくなります。アメリカのマウンドでは、パンって前足を踏み出したら、あとはもう投げるしかないので」

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