イチロー初球宴から20年。
アメリカの価値観を変えた偉大な軌跡

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO


 地元の新しいスターの活躍に、セーフコ・フィールドを埋め尽くした4万7000人もの大観衆からは盛大な歓声と拍手喝采の嵐。内野席で観戦していた私にとって、それは夢のような瞬間でした。

 あれから20年。イチロー選手はメジャーの殿堂入りへの証とも言える通算3000安打をはじめ、数々の金字塔を樹立。そして昨年3月、日本開幕シリーズで超満員の大観衆からイチローコールを浴びながら、メジャー19年の現役生活に別れを告げました。

 振り返れば2001年、イチロー選手は「メジャー史上初の日本人野手」としてマリナーズに鳴り物入りで入団。ただ、オリックス・ブルーウェーブ時代に日本プロ野球記録の7年連続首位打者に輝いたイチロー選手といえども、メジャーでこれほど活躍するとは誰も想像していませんでした。

 むしろ、広大な北米大陸を移動しながら年間162試合もプレーするので、「日本人は投手ならまだしも、野手は体力的に持たない」と疑問視する声が当時は大多数でした。「本場のパワーやスピードに太刀打ちできない」という懐疑的な意見も多かったと覚えています。

 しかし、イチロー選手は157試合に出場して打率.350、56盗塁をマークし、メジャー1年目で「首位打者&盗塁王」のダブルタイトルを受賞。黒人メジャーリーガー第1号のジャッキー・ロビンソン以来となる快挙を成し遂げたのです。

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