菊池雄星、メジャー2年目は逆をいく。
アジャストよりも大事なこと

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Taguchi Yukihito

「真っすぐがよくなれば、スライダーも嫌がられるボールになると思うんです。そこは相乗効果が生まれますし、92、93マイルのスライダーなら、まっすぐとの見極めが難しくなります。ただ、まっすぐはスピードだけじゃなくてホップ成分も上がっていて、去年より15センチ、20センチ、ホップしているんです。そうなると、去年まで振ってくれたワンバンのスライダーに手を出してくれなくなります。だから今年はワンバンしない、速いスライダーで空振りをとることをもうひとつのテーマにしています」

 バッターがワンバウンドするスライダーに手を出してしまうのは、ストレートだと勘違いして振るからだ。昨年のストレートならワンバウンドのスライダーでも手を出してくれたのだが、今年のストレートはホップする分、ワンバウンドのスライダーでは低すぎてストレートとは見間違えてくれないのだ。だからヒザの高さに投げないと、空振りは取れない。

「去年は自分を出せていなかったんです。本来の自分のボールを投げられていなかったんですから、土俵にも立てていなかったことになる。なのに、技に走るという感覚は僕にはありませんでした」

 ホップする96マイルのストレートと、ヒザの高さのストライクからボールになる93マイルのスライダー──これが今年の菊池の決め球になる。アジャストなんて必要ない。2年目の菊池雄星は、居並ぶメジャーのスラッガーたちと真っ向からパワーで勝負しようと、牙を研いでいる。

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