2019.10.10

田中将大は「観る力」がケタ違い。
「勝てる」礎は中学時に築き上げた

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Okazawa Katsuro

「中学生がプロの技術を真似ることはできないけど、中学生がプロの意識を持つことはできる!」

 これは奥村の口癖のひとつだが、田中も何度もこの言葉を聞き、冷静な思考、熱く強いハートを身につけていった。これまで田中を取材したなかで、何度か中学時代の話になることがあった。そのいくつかを紹介したい。

「(奥村監督からは)調子がいい時は誰でも頑張れる。悪い時にこそ、選手の本当の真価が問われると言われていました。この教えは、ずっと僕のなかにあります。状態が悪いから『しょうがない』とは一切思わない。ブルペンで真っすぐが走らなくても、変化球でストライクが取れれば大丈夫とか、プラスに目を向けてそこから抑えられるように考えを広げる。そしていざ投げるとなった時には、『絶対に打たれない』と自分のボールに自信を持って投げていました」

「技術だけでなく、意識の持ち方や状況判断といったところを繰り返し教えられました。中学時代の練習メニューで一番頭に残っているのは、ランナーを置いて行なう状況判断ノックです。走者の動き、プレーの流れをイメージしながら、ボールに直接関わっていない選手も打球に集中して動く。最初は要求が高くて動き方もわからなかったんですけど、常に視野を広く持てと言われて、徐々に理解できるようになり、力もついていったと思います」

「中学時代に、ピッチャーとしてもバッターを見る力がついたのが大きかった。単に投げるだけでなく、バッターが何を狙っているのかを『動きだけでなく、雰囲気で感じろ』とよく言われました。レベルが上がるほど、投げる以外の部分が大事になってくる。そこは常に思いながらやっていました」

 田中について奥村に話を聞くと、最たる能力として"観る力"の高さを挙げた。

「試合状況、相手打者、味方の野手......常にそのあたりを頭に入れて投げられる。力があるのはもちろんですけど、"観る力"ケタ違い。だから、勝てるんだと思います」