2019.05.12

1イニング先発は吉と出るか。
菊池雄星の起用法を田中将大も後押し

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by getty Images

「真っ直ぐには聞いていた以上に力があり、事前の想定を上回っていた。この威力を今後も保てれば面白くなるね。カーブは打者の肩口から落ちてくる感じで、スライダーも鋭い。ボールを上手に隠す投球フォームも武器になる。今後も(ヤンキース戦のように)速球に力があればという条件つきだが、先発ローテのトップ(1、2番手)が任せられる投手かもしれない」

 試合後に菊池本人が語ったところによると、この日の真っ直ぐには満足していなかったという。実際に、前回の登板(3日のクリーブランド・インディアンス戦)では速球の最速が97マイル(約157km)だったのに対し、ヤンキース戦での最速は94マイル(約151km)。それでもメジャーのスカウトを感嘆させたのだから、余計に楽しみだ。

 菊池が1年目から「悪くない成績を残す」と考えていた関係者は少なくなかった。「左中間が深い」「内野の天然芝が長めで打球が失速しやすい」など、打者には不利なT-モバイル・パーク(旧セーフコ・フィールド)を本拠地としていることに加えて、希少価値のあるサウスポー。持ち球には一部の関係者の予想を上回る力があり、層が厚いとは言えないア・リーグ西地区に所属していることからも、10から15の勝ち星を挙げることは可能かもしれない。

 ひとつ気になるのは、スカウトが「速球が威力を保てれば」と念押ししていたことだ。つまり”耐久力”に関してはまだ不透明だということ。メジャー1年目で、シーズンを乗り切れるかが証明されてないのだから当然ではある。

 中4日のローテーションに慣れていない日本人投手には、常に耐久力への懸念が呈される。短期間ならメジャーで活躍できる能力を持っていても、それを維持、持続できないなら価値が目減りするのは言うまでもない。

 ただ、日本人ピッチャーの扱いを熟知したマリナーズは、この点にもあらかじめ配慮している。盛んに喧伝されている通り、菊池のMLBルーキーシーズンは、1カ月に1度のペースで”1イニング限定の先発”が組み込まれるという。4月26日のレンジャーズ戦では、1回を無安打2奪三振で無失点に抑え、予定通りに降板。今後もこの斬新なプランは継続されるようだ。