ファン、雄星、翔平、プロ野球へ。イチローから現役最後のメッセージ (5ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― 涙がなく、むしろ笑顔が多いように見えたのは、この開幕シリーズが楽しかったということなんでしょうか。

「これも純粋に楽しいということではないんですよね。やっぱり、誰かの思いを背負うということは、それなりに重いことなので、そうやって1打席1打席立つことって、簡単ではないんですね。だから、すごく疲れました。やっぱり1本ヒットを打ちたかったし、応えたいって、それは当然ですよね。僕には感情がないと思っている人がいるみたいですけど、意外とあるんですよ。だから結果を残して、最後迎えられたらいいなと思っていたんですけど、それはかなわずで。それでもあんなふうに(ファンは)球場に残ってくれて。『死んでもいい』という気持ちはこういうことなんだろうな、と。死なないですけど、そういう表現をする時って、こういう時なのかなって」

―― 常々、最低50歳まで現役とおっしゃっていましたが、日本のプロ野球に戻ってきてプレーするという選択肢は、イチローさんにはなかったのですか。

「なかったですね」

―― どうしてでしょうか。

「それはここでは言えないなぁ。ただね、最低50歳までって本当に思っていたし、でもそれはかなわずで、有言不実行の男になってしまったわけですけど......でもその表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかなという思いもあります。だから、言葉にすることは難しいかもしれないけど、言葉にして表現することっていうのは、目標に近づくひとつの方法ではないかと思います」

―― これまで野球に費やしてきた時間、それが空くという前提で、これからどうされていくのかなと。

「今はわからないですね。でも、明日もトレーニングはしていますよ。それは変わらないでしょうね。じっとしていられないから。それは動き回っているでしょうね。だから、ゆっくりしたいとか全然ないんですよ」

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