あれから10年。フィリーズ世界一メンバーが
今も田口壮に感謝していること

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

 カージナルスに在籍した6年で、プレーオフ出場4回、ワールドシリーズ出場2回。2006年には世界一にも輝いている。

 当時、フィリーズの主力はほとんどが20代で、才能はあるが経験不足の選手が多かった。だからこそ、田口の存在は大きかった。

「ソウはチームに計り知れないほど、影響を与えてくれました」と語るのはビクトリーノだ。

「たとえ試合に出なかったとしても、ソウは毎日しっかり練習をこなしていました。毎日プレーしている者として、そうした姿を見ると、尊敬すると同時にやらなきゃという思いになりました。彼が2004年、2006年のワールドシリーズに出て、06年には世界一になったことは知っていました。その年のリーグチャンピオンシップでメッツのビリー・ワグナーからホームランを放ち、カージナルスをワールドシリーズに導いたのも見ているんです。

 それぐらいの人が毎日一生懸命トレーニングしているんですから......その姿を見るだけでも勉強になりました。いろいろ質問もしましたし、チームにとっても経験豊富なソウの存在は本当に大きかった。いろんな意味で助けられました」 

 フィリーズの選手としてポストシーズンを戦った田口だったが、わずか4打席だけの出場でヒットはなし。ワールドシリーズにいたっては、出場機会がなかった。

 それでも、フィリーズのなかで一番の経験者であり、大ベテランのモイヤーさえ田口に一目置いていた。

「みんなホームランの飛距離や、豪快なピッチングに目を奪われてしまいますが、勝つためにはそれだけではダメで、25人の力が必要になります。そういう意味で、ソウはかけがえのないチームメイトでした。ソウがいたからこそ、今日ここに戻って来られて、祝うことができたんです」

 8年間のメジャー生活で、田口は13回のシャンパンファイトを経験している。そのうち2回はワールドシリーズを制したものだ。松井秀喜の12回を上回る田口は、日本人メジャーリーガーのなかで、誰よりもシャンパンの味を知っているのだ。

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