マック鈴木が結城海斗に伝授。マイナーからメジャーに這い上がる術 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 メジャーは数百億、数千億円のビジネスの世界ですし、新しい選手が次々に出てくる。3年ぐらいで結果を出さないと、球団のビザの枠もあり、「ダメだったな」とあっさり捨てられる世界です。

 結城くんは来年、おそらくルーキーリーグからのスタートだと思いますが、次がショートAかハイA......。ここまでを「ジャングル」と言うのですが、ここを2年ぐらいで抜け出したいですよね。

 そして次に待っているのが、2Aのカベです。マイナーでも2Aから上はレベルが違います。僕は3Aでボコボコに打たれたときに「1Aとはこんなにもレベルが違うものか......」と絶望的になったことがありました。

 そのハイレベルな2A3Aを越えた先に待っているのがメジャーですが、ここに居続けることって本当に大変なことなんです。

 アメリカでは、見るもの、学ぶもの、競争相手......すべてが今まで見たこともないものばかりで、これまでの野球観は大きく変わると思いますし、変えなければなりません。だからといって、何でもかんでも情報を鵜呑みにしてはいけません。

 僕の場合は、ウエイトトレーニングをやって「筋肥大させればパフォーマンスが上がる」という時代の全盛でした。マリナーズと契約したオフに、選手が集まってトレーニングしている場所で、僕も「いいな」と思って本格的にウエイトを始めたんです。

 でも、胸囲が8センチ大きくなることで、どういう球が投げられるのかまでは考えていない。ベンチプレスなんて、ほかの選手に負けたくないから一生懸命上げる。そうすると、体は大きくなり、足も太くなるんですが、体は重くなり、足も遅くなる。結果、日本人特有の体のしなやかさが失われ、遠投もできなくなって、肩あたりの感覚がなくなったんです。無知でしたよね。

 正直、94年のマリナーズのメジャーキャンプは、あの状態でよく投げていたと思います。当時、コンディションについてはウソばかりついていました。

 それにメジャーで1球も投げていないのに、日本の報道陣が100人くらい集まって......水を飲むだけでシャッター音がすごいんですから。ほかの選手の目もありますし、当時19歳の僕としては、かなりきつかったですね。でも、そのなかでランディ・ジョンソンが盾になってくれて、またクリス・ボジオも兄貴分としていろいろと手助けしてくれた。本当にありがたかったです。

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