あの元巨人のダメ助っ人が、
日本での失敗に学びメジャー監督で成功へ

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 少なくとも現時点までは、アメリカ人以外の選手ともうまく通じ合っているように見える。5月下旬、アメリカのスポーツウェブサイト『The Athletic』に掲載された特集では、ドミニカ共和国出身のカルロス・サンタナ、マイケル・フランコとも良好な関係を築いていることが強調されていた。

「外国人に対しては、継続した形で努力を示すこと。言葉の壁があるため対話が快適ではないことがあるが、それでも努力を続けることが大事なんだ」

「英語が母国語ではない選手とのコミュニケーションのカギは?」と聞くと、キャプラーからは上記の答えが返ってきた。なかなか意思が通じずに傷つくことがあっても、勇気と根気を持って話し続けることは言語学習の基本でもある。

 キャプラーは、第3回、第4回のワールド・ベースボール・クラシックで、イスラエル代表の監督、コーチを務めた。2014年以降はドジャースのフロントに入り、多くの外国人選手たちを扱った。

 それらと同様に、日本での日々が肥やしになっている部分もあるに違いない。こういったさまざまな経験から、キャプラーが外国人選手との対話に関して明確なフィロソフィーを育んできたことは容易に想像できる。

 もちろん、依然として再建途上のフィリーズがこのままスムーズに勝ち続けるとは限らず、"青年監督"の力量は試され続けるはずだ。試練を味わう時期もくるだろう。しかし、"Be Bold(もっと大胆に)"をキャッチフレーズに、長期的な視野に立ってのチーム作りを掲げるキャプラーが大きく戸惑うことはないだろう。

「日本での日々で後悔する点があるとすれば、もっと長くいることを前提に取り組まなかったこと。当時の私は若く、日本で短い時間だけプレーし、アメリカに戻ろうと思っていた。より長期的な視野で物事を考えておく必要があったんだ」

 このように苦い経験を公に話し、反省できることもキャプラーの成熟を物語っている。成功だけでなく失敗も味わってきた人だからこそ、忍耐強く取り組み、前に進むことができる。今では長い目で人間関係を築けるようになった42歳は、フィラデルフィアでの野球人生の集大成といえる成功に向けて、今後も着実な歩みを続けていくに違いない。

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