イチローに飛び出した「ホームラン競争出場説」。その背景と可能性は? (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 イチローが打撃練習で大飛球を連発するエピソードは有名なのだから、万が一勝っても他の強打者たちの名声に傷がつくとは思えない。ここでイチローという伝説的選手が例外的に出場することが、今後のダービー参加候補選手たちのメンタリティに大きく影響するとも考えにくい。

 ホームラン競争に参戦した場合、歴史的なヒットメーカーも、現実的には"大穴"扱いだろう。実際には勝ち負けはポイントではなく、最も重要なのは「ファンが歓喜するのは確実だ」ということ。ファンありきのプロスポーツで、最優先されるのはその部分のはずである。

「そりゃ悪い気はしないですよ、もちろん」 

 とりあえず参加を繰り返し否定したイチローだったが、終始満面の笑顔でそう語るなど、まんざらではない様子でもあった。

「こういうタイプの選手が出るだけでも面白いというのはわかりますけど」「プロでもあるんでね、そういうこと(=ファンの期待に応えること)も大事なことではあるんだけどね」といった言葉から、ほんのわずかながら心変わりの可能性を感じたのは筆者だけではないはずだ。一度の否定で諦めず、今後もファン、メディアがキャンペーンを続ければ、もしかしたら......。

 ベースボールとは楽しむためのもので、オールスターはその究極の舞台である。ルールや配慮に縛られて、楽しめる要素を奪ってしまっては意味がない。

 来季以降のイチローがどんな立場になるかは未定だが、環境、状況的に、おそらく今年がホームラン競争参戦のベストタイミングであり、最後の絶好機でもある。SNSのハッシュタグ「#IchiFor DC」のキャンペーンがさらに拡大し、イチロー本人の心を動かすことを願いたい。

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