イチローの旅は続くのか。メジャーの超大物たちが語った衝撃デビュー (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 このときの取材では、メジャー通算3000安打を超える偉大なふたりの打者にも話を聞くことができた。ひとりはメジャーで8度の首位打者に輝き、2014年に惜しくもこの世を去ったトニー・グウィン(当時パドレス/外野手)だ。

「メジャーは今、パワーヒッターがコンタクトヒッターのように3割5分を打つ時代だ。お金も彼らに集中する。すると、コンタクトヒッターもパワーをつけてホームランを狙い出す。ヒット狙いで出塁率が高く、盗塁をもして得点が多いという純粋なコンタクトヒッターは本当に少なくなったよ。今、メジャーを見渡しても、純粋なコンタクトヒッターといえるのは、イチローだけだ」

 メジャー通算3010安打を記録し、首位打者5回のウェイド・ボッグスは、当時、デビルレイズの打撃コーチとして対戦相手のイチローのバッティングを見ていた。

「私の打撃スタイルに近いかと聞かれれば......少し似ているかもしれないが、微妙な違いがある。イチローの重心は、私より前に乗っている。私は前足に向かってスイングしていたけど、イチローは前足を使ってスイングする。後足を引きずるスタイルで、地面から5センチと離れていないボールでも打ててしまう。この独特のスタイルをほかの選手が真似するのは難しいと思う。普通とは逆だからね」

 その言葉通り、今日までメジャーにイチローのような選手は出現していない。なにより、イチローのように「故障者リスト」にほとんど入ることないまま、現役を続けている選手は皆無に等しいのではないだろうか。これはヒットを何千本打つことよりもすごいことだと思う。それだけでもイチローはメジャーの長い歴史の中で、唯一無二の選手なのである。

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