ケガをしても二刀流。大谷翔平がメジャー1カ月で見せた前人未到の世界 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「能力自体はとてつもなく、投打ともに間違いなくメジャーでも通用する。ただ、ケガのリスクは普通に考えて他のピッチャーの2倍。故障離脱すればチームへの影響も2人分。起用法も簡単ではないよ。チームが勝っている間はいいが、シーズン中に何らかの形で難しさが生まれてきても不思議はない」

 4月中旬ごろ、メジャーの某チームのスカウトがそう述べていたことがあった。大谷の株が絶頂期だった当時は気にも留めなかったが、ヤンキース戦での喧騒を見て、その言葉をあらためて思い出させられることになった。このシリーズ中は、その魅力と難しさの両方がわかりやすい形で提示されたからだ。

 一部で言われているように、現時点でどちらかに専念すべきだとは思わない。アメリカにおけるプロフェッショナル・ベースボールはスポーツ・エンターテインメント。大谷ほどファンを喜ばせられる選手はほかに存在しないし、本人が二刀流を望み、チームがサポートしている以上、継続されてしかるべきではある。

 ただ......ヤンキースとのシリーズで垣間見えたように、シーズンが進むにつれて様々な難題が出てくるだろう。大谷の状態、他の選手たちへの影響も気にしながら、チーム側が難しい選択を迫られるケースは増えてくるはずだ。そして、ハネムーンはそろそろ終わり、大谷自身のメジャーリーガーとしての真価が問われるのもこれからに違いない。

 相手チームのスカウティングが進む中で、23歳の怪物は今後も適切なアジャストメントを進められるか。メジャー特有のハードな日程をこなしながら、上質なコンディションを保てるか。投打のどちらかが不振に陥ったときに、チームはどんな形で対処し、調整させるのか。シーズン中盤以降までプレーオフ争いに残ったとして、緊張感が増すゲームの中でも首脳陣は臨機応変かつ適切な起用ができるのか......etc。

 ほとんど前例がない試みであるがゆえに、これらの疑問への答えは簡単には見えてこない。だからこそ、見ているファン、メディア、関係者の興味はそそられる。

 楽しみはまだ始まったばかり。現時点で1つだけ言えるのは、同世代の私たちが、球史に残るユニークな挑戦を目撃しているということだけである。

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