初対決の大谷も返り討ちか。ヤンキース田中将大の真っ直ぐにキレ戻る (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 普段の田中は、「真っ直ぐがよくなければ好投できない」という投手ではない。2017年を振り返っても、最初の14戦では速球系(フォーシーム&シンカー)を38%の割合で使い、防御率6.34と苦しんだ。

 すると6月23日(レンジャーズ戦、8回無失点)以降、速球系の割合を28%まで減らすことで活路を見出す。この適応が功を奏し、シーズン後半の21戦では11勝7敗、防御率3.09と数字を劇的に向上させている。

 自身の出来、相手の対応を吟味しながら、対応策を見つけていくのが背番号19の真骨頂。それゆえに、速球が好調ではない日でも抑えられる。この引き出しの多さは、"魔球"スプリットと並ぶ田中の最大の武器と言える。

 ただ、安定した投球をするだけでなく、いわゆる"支配的な内容"を望むのならば、上質な真っ直ぐはやはり必要なオプションだろう。ツインズ戦前には田中自身も「良くも悪くも(直球が)その登板を大きく左右する」と語り、速球の質を向上させることの重要性を述べていた。

 メジャー入り以降、最大の見せ場となった去年のプレーオフでは、第1ラウンドのインディアンスとの第3戦で、速球系を21.7%しか使わずに7回を零封。一方、ア・リーグ優勝決定シリーズ第5戦では速球系を33%に増やし、強打のアストロズ打線を7回無失点に封じ込めた。強力打線を相手に、このような短期間での切り替えができるのは、速球、変化球が共にハイレベルだからこそだ。

 そういった例を思い返すと、なおさら真っ直ぐに好調時の勢いがあったツインズ戦の投球は心強い。まだ去年のプレーオフのレベルではないにせよ、確実に田中はいい方向に踏み出している。今春のアメリカ東海岸は寒さが続いてきたが、この日は試合開始時点で13度と春らしい気温だったことも、大きく影響したに違いない。

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