伝説のノーヒッターの夜。ロイ・ハラデイは白い炎となって燃えていた (4ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「できることはもう何もなかった。いいピッチングはいい打撃を打ち破るということ。そして今夜の(ハラデイの)投球は最高だったということだ」

 あのドラマチックな2010年10月6日、レッズを指揮していたダスティ・ベイカー監督の言葉から漂ってきたのは、「ハラデイが相手なら仕方ない」というあきらめに近い感情だった。

 投手として優れているだけでなく、プレーに臨む真摯な姿勢でも評価が高かった好漢。本名ハリー・リロイ・ハラデイ3世は、そんなピッチャーだった。同世代のペドロ・マルチネス、ランディ・ジョンソン、カート・シリングといった名投手たちはキャラが濃く、毀誉褒貶(きよほうへん)も激しかったのとは一線を画し、ハラデイは満場一致で誰からも尊敬されたスーパースターだった。

 鮮やかな記憶の残像は決して消えない。今でもふと目を閉じれば、2010年秋の驚異的なパフォーマンスと、度肝を抜かれたようなフィラデルフィアのファンの歓声が、"白い炎"の迫力ともに鮮明に甦ってくるのである。

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