NY歓喜のタナカ・タイム。
「こういうゲームで勝つためにここに来た」

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

「いろんな部分でのバランスがよかった。相手のバランスを崩せていた」

 田中本人がそう語った通り、ア・リーグの昨季王者を向こうに回し、"知力、体力、時の運"をすべて駆使したようなピッチングは実に見応えがあった。6回には、フランシスコ・リンドーアの右翼への大飛球をアーロン・ジャッジが超美技でキャッチし救われたが、この打球にしても完璧に捉えられたわけではない。

 身も凍るような重圧の中で、7回を3安打無失点、1四球、7奪三振という投球内容は圧巻。決勝弾を放ったグレッグ・バード、5アウトを奪った守護神のアロルディス・チャップマンの活躍も際立ったが、勝利の"最大の立役者"が田中であったことに疑いの余地はない。

「プレッシャーはもちろんありましたけど、そういう状況でやることがプレーヤーとしての喜び。勝つことで流れを変えられるんじゃないかと思っていた。ネガティブに捉えないで、ポジティブに捉えてマウンドに上がることができました」

 田中はそう述べたが、本当にシリーズの流れが変わるかどうかはわからない。対戦成績は1勝2敗となったが、地力で勝るインディアンスを相手に、ヤンキースの絶対不利は依然として変わらないだろう。第4戦、あるいは11日の第5戦でシーズンが終わる可能性は低くない。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る