NY歓喜のタナカ・タイム。「こういうゲームで勝つためにここに来た」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

 今季メジャー最多タイの18勝を挙げた、インディアンスの先発カルロス・カラスコのスライダーにもキレがあり、1点勝負になることは序盤の時点で明らかだった。緊張感に溢れたゲームのポイントは4回表。田中が一死から2番のジェイソン・キプニスに不運な右越え3塁打を許し、相手の中軸を迎えた場面である。
 
「コンタクトがうまい(ホセ・)ラミレスでしたけど、何とか三振に取りたかった。(ジェイ・)ブルースもそういう気持ちがありました」

 犠牲フライでの1点も許したくない状況で、田中は狙い通りに3番ラミレス、4番ブルースをスプリットで連続三振に斬って取る。この日のスプリットには極上のキレがあり、来るとわかっていても打者は対応しきれないレベルだった。ピンチを脱した田中はマウンド上で雄叫びを挙げ、満員のファンもその闘志に酔った。

 真っ向勝負にこだわるのではなく、引くべきときには引けるのも田中の長所である。続く5回、インディアンス打線のなかで最もタイミングが合っていたカルロス・サンタナに対しては、安易にストライクを取りにいくことを徹底して避けた。

「先頭バッターですけど、長打が一番いけなかった。3-2からのボールも自分ではいいところに投げた。(歩かせても)しょうがないという感じでした」

 たとえイニングの先頭打者であろうと、左打者の本塁打が出やすいヤンキースタジアムでは一発を打たれるリスクは冒せない。結果として無死一塁になったが、その四球すらもある程度は計算の内だったことを、田中は試合後に認めていた。その後、一死からマイケル・ブラントリーに二塁ゴロを打たせて併殺を奪い、ここでもピンチをしのいでいる。

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