最底辺よりも下。「プロ野球難民」が集うペコス・リーグって何だ? (4ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 1947年に建造され、ニグロリーグの伝説の投手、サチェル・ペイジもマウンドに登ったというこの球場は、すでに町の歴史遺産である。入り口の鉄格子には、ボールをあしらった取っ手やこの町のチームであるアルパイン・カウボーイズのロゴが組み込まれている。

 カウボーイズの歴史は1946年に遡(さかのぼ)る。地元の有力者がセミプロチームを統合してプロ化したのが始まりだ。しかしその後、メジャーリーグのテレビ放送が始まり、マイナーの弱小リーグが淘汰されていくなか、このチームもやがて消滅を余儀なくされた。

 ところが1990年代以降、各地に独立リーグが誕生すると、2009年にカウボーイズが復活し、ここアルパインにもプロ野球が戻ってきた。正直、プレーのレベルはお粗末なものだが、チームはこの何もない町の人々にナショナルパスタイム(庶民の娯楽)を提供している。そのことは、試合直後の観客の表情が物語っていた。

 その翌日、車をニューメキシコ州のアラゴモードという町まで走らせた。草野球の桟敷席のようなスタンドの背後に山脈を望むこの球場に、この日足を運んだ観客は100人にも満たない。

 入場料はたった6ドル。それでも、ボランティアだというスタジアムDJが試合を盛り上げると、ファンはその声に呼応し盛り上がる。

 アメリカではおなじみの7回のストレッチ・タイムになると、メイン球場の周りにクローバー状に広がるフィールドを見下ろす監視塔から、数少ないファンに向かってスポンサー提供のドーナツが投げ入れられる。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る