イチローの去就にも影響か。
どうなる、ジーターのマーリンズ買収問題

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 マーリンズは1993年に誕生以降、チーム史の24年中18年で負け越してきた、リーグを代表する弱小球団。資産価値では30チーム中25位と低く、観客動員でも昨季は同27位という不人気チームである。

 フロリダ州はもともとスポーツに熱狂的とは言えないことに加え、大型補強とファイヤーセール(大量放出)を繰り返すポリシーの見えないチーム作りが人気低迷の原因だ。美術商として財を成し、球団の陣頭指揮を執ってきたオーナー、ジェフリー・ローリアは激しく批判され、球界ではジョークの対象にすらなってきた。

 そんなチームに好影響を与えるのに、闘争心とベースボールへのリスペクトを兼備したジーター以上の存在はいないようにも思えた。

 ジーターがデビューした翌年の1996年からヤンキースの黄金期は始まり、以降の20年で5度も世界一に輝いている。その過程で、数え切れないほどの劇的なシーンの主役となり、文字通りの「勝利の使者」となった。オーナーとしての実績はなくとも、強いチームに必要なものを熟知したジーターなら、マーリンズのカルチャーをも変えてくれるかもしれない......。

 しかし、冒頭のジーターの言葉が示唆する通り、物事はそうシンプルには運ばないようだ。当初の報道に反し、「ジーターがマーリンズのオーナーになる可能性は低くなっている」と伝えられ始めたのは5月に入ってからのこと。MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドも「マーリンズを誰が買収するかは未定」と話しており、その動向が注目され続けている。

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