バーランダーが火つけ役。MLBは「高めのフォーシーム」が新トレンド (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 2015年のバーランダーのスピンレートは、メジャー全体1位の2491rpmという数字を示していました。「rpm」は1分間の回転数を表す単位です。バーランダーはその分析結果を大いに活用したことで、2016年には16勝9敗をマークし、ア・リーグ2位の防御率3.04、リーグトップの254奪三振と、見事なカムバックを果たしました。

 世間的には「ストレートの速いピッチャーのほうがスピンレートも多い」と思われがちですが、実はそうとも限りません。球速の遅い軟投派ピッチャーでも「高めのフォーシーム」を多投するように切り替えたことで成功した例はあります。その代表的なピッチャーといえば、カンザスシティ・ロイヤルズのクリス・ヤングでしょう。

 ヤングは名門プリンストン大学出身の身長208cmもあるインテリ投手で、2015年のフォーシームの球速は平均時速89.7マイル(約145キロ)でした。この数字はメジャー全体のなかでもっとも遅い部類に入ります。それまでずっと軟投派ピッチャーとして歩んできたヤングは、バッターをゴロで打ち取ってホームランを防ぐため、コーチから常にボールを低く投げるように指示を受けていました。

 ところが2015年、スタットキャストでヤングの球質を解析してみると、ストレートの球速は遅いにもかかわらず、スピンレートは2379rpmもあったのです。この回転数はメジャー全体の上位10%にあたる数値でした。その後、フォーシームを高めに投げるように意識すると、2015年には11勝をマークしてロイヤルズの世界一にも貢献することができたのです。

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