速球より遅球。データでわかる、ダルビッシュ完全復活へのカギ (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu  photo by Getty Images

 そして3つ目。ダルビッシュ投手が完全復活を遂げるために、もっとも注目したいのがこちらです。それは、「オフ・スピード・ピッチ」。日本語に訳すと「緩急」に近い意味ですが、今、アメリカではこのスピードを抜くボール「オフ・スピード・ピッチ」という言葉が注目されています。

 手術前のダルビッシュ投手を語るとき、メジャー関係者の間でよく言われていたのが、「緩急自在のピッチングがいい」という評判でした。平均93マイル(約149.6キロ)の速球をベースに、89マイル(約143.2キロ)のカッター(カット・ファストボール)、88マイル(約141.5キロ)のスプリット(SFF)、86マイル(約138.3キロ)のチェンジアップ、81マイル(約130.3キロ)のスライダー、78マイル(約125.5キロ)のカーブ、そしてさらに遅い69マイル(約111キロ)のスローカーブ。過去にもっとも遅かったスローカーブでは、56マイル(約90.1キロ)という数字も残しています。

 つまり、93マイルの速球から69マイルのスローカーブまで、平均速度で実に24マイル(約38.6キロ)差を生み出しているのです。これほどのスピード差があって、さまざまな球種を投げられるというのが、ダルビッシュ投手の魅力と言われています。メジャーの大打者たちが苦戦するのも当然です。

 その結果、ダルビッシュ投手は2012年のレンジャーズ入団から2014年に手術を受けるまでの3年間、先発ピッチャー全体のなかでメジャー1位の奪三振率(30%)、2位の空振り率(29%)、4位の被打率(.216)を残しています。これは、誰よりもスピードを変化させる能力が長けているからでしょう。

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