元メジャースカウトが語る「前田健太の成功のカギは岩隈流投球術」

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「私が初めてシアトルへ行ったとき、ジェイミー・モイヤーの投球練習を見ました。でも、球速はないし、球種も少ない。正直、『本当にエース……?』と思ったのですが、すぐコントロールのよさに気づきました。真っすぐも曲がりの大きいカーブも、構えたところにピタッとくる。ミットがまったく動かないんです。あらためて、ピッチャーはコントロールだと思い知らされました」

 そして山本氏はもう1点、岩隈に学ぶ成功のポイントを挙げた。それが「球の質」だ。岩隈は、山本氏が近鉄のスカウト時代にその素質に惚れ込み、ドラフト5位で堀越高校から獲得した選手でもある。順調に成長し、近鉄、楽天のエースとして活躍したときには、回転力のある、失速しない真っすぐが大きな武器となっていた。

「当時の彼のストレートは、本当に惚れ惚れするきれいな球筋でした。でも、今はどうですか? テレビで見てもわかるように、きれいな真っすぐは減って、ちょっと曲がったり、沈んだりという球が増えた。日本で投げているときは、スライダーはもっと変化が大きく、フォークも投げていましたが、アメリカでは変化の幅を小さくし、真っすぐは汚い回転の球が中心。アメリカ仕様の球をしっかり内外角低めに投げ切れる投球ができるから、安定した成績を残せるんです」

 対して前田はどうか。投手としての基礎を学んだPL学園時代から本人がこだわり、磨いてきたのが「きれいな回転の真っすぐ」と「アウトローの制球力」だった。さらに球種は真っすぐとカーブのみ。そこからプロとして経験を積むなかで、球種を増やし、投手としての幅も広げてきた。ここからさらにメジャー仕様のスタイルを確立することで、大きな結果をもたらすことになるだろう。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る