球速低下が指摘される田中将大。問題はそこではない (4ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu  photo by AFLO

 したがって、田中投手のようにじん帯を部分断裂していながらも、手術を回避して投げ続けることは不可能ではありません。ただ、それまでの投球スタイルから変えていくことも必要だと思います。開幕戦でツーシーム主体のピッチングにしたのは、まさしくそれの表れでしょう。ひじへの負担を軽減させるために、新しいスタイルにチャレンジしているのです。

 メジャー開幕直前、田中投手は共同記者会見で、「今シーズンは新たな投球スタイルを確立するので、球速は期待しないでください」と語っています。また、ジョー・ジラルディ監督も、「球速が変化することで、相手バッターを惑わすことはできる」と述べ、ひじへの負担を考慮した田中投手の投球スタイルの変化を、プラスとしてとらえる発言をしています。開幕戦では敗戦投手となりましたが、現地メディアが問題視するように、「球速が落ちたこと=敗因」というわけではないと思います。

 前出のアンドリュース医師は、先発ピッチャーが成功するカギとして、次の4つを挙げています。「速球のスピードの変化」「ボールの動き」「コントロール」「安定したメカニック(投球フォーム)」。ストレートのスピードを変化させ、ツーシームでボールを動かし、思ったところに投げ、投球フォームを安定させることが大事だと語っています。開幕戦後に田中投手も、「今日はメカニックが悪かった」と言っていました。上記の4点さえしっかりできれば、たとえ150キロの球速を叩き出さなくても、おのずと結果はついてくると思います。田中投手が確立しようとしている新しい投球スタイルに、今後期待しています。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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