イチローとマーリンズの相性が良い5つの理由

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu  photo by Getty Images

 ふたつ目の理由としては、「スピードと守りの野球スタイル」を挙げたいと思います。マーリンズというチームは、昔から投手力と守備、そしてスピードを重視した野球スタイルを目指しています。球団2度目の世界一となった2003年は、1番のフアン・ピエール(現FA/2001年・2003年・2010年盗塁王)と、2番のルイス・カスティーヨ(前ニューヨーク・メッツ/2000年・2002年盗塁王)の俊足コンビが暴れ回ってワールドシリーズを制しました。

 しかし、昨シーズンのマーリンズの盗塁数は、メジャー30球団中27位の58個。機動力を発揮したシーンは多くありませんでした。したがって、昨年たったひとりで64盗塁をマークしたゴードンの加入は、マーリンズに新たな風を吹き込むはずです。もちろん、イチロー選手にとっても、持ち味のスピードが大いに生かされることでしょう。マーリンズの攻撃スタイルは、イチロー選手に合っていると思います。

 一方、守備の面では、2012年にオープンしたマーリンズの新球場が関係してきます。本拠地マーリンズパークは、ジャイアンツのAT&Tパークと並ぶメジャーで最もホームランの出にくい「ピッチャーズパーク」として有名です。外野がとても広く、レフトは340フィート(約103.6メートル)、左中間は384フィート(約117メートル)、センターは420フィート(約128メートル)、右中間は392フィート(約119.5メートル)、ライトは335フィート(102.1メートル)。左中間と右中間の膨らみが大きく、センターも非常に深いのです。このような広い外野で戦うマーリンズにとって、イチロー選手の強肩は大きな武器となるでしょう。

 そして3つ目は、「温暖な気候と、開閉式ドーム球場」という点です。昨年まで所属していたヤンキースの本拠地ニューヨークは、とにかく春先が寒く、シーズンを通して雨の多い場所でした。よって、雨天中断する試合が多く、それだけで体力を消耗させられたと思います。それに比べてマーリンズの本拠地マイアミは、世界でも有数のリゾート地であり、1年中温暖な気候に恵まれています。日々のトレーニングやコンディション作りに、これほど最適な場所はありません。

 夏はマイアミでも雨が多いのですが、マーリンズパークは開閉式ドーム球場なので、雨天中断や雨天中止となる心配がありません。ヤンキース時代は、雨の影響で2~3時間の中断は当たり前でしたし、試合が流れてダブルヘッダーとなるケースも少なくありませんでした。そういった点でも、ペースを崩されることなく野球に打ち込めるマーリンズは、イチロー選手にとって好環境だと思います。

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