ジャイアンツ世界一の陰にWBC日本代表の影響あり? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 特に今回、バムガーナー以外の先発投手はワールドシリーズで軒並み不調でした。第6戦はジェイク・ピービーが1回3分の1で5失点、第7戦はティム・ハドソンが1回3分の2で2失点し、いずれも早々に降板しています。しかし、そんな逆境からチームを救ったのもバムガーナーでした。逆王手をかけられたアウェーでの最終戦で5回から登板すると、ロイヤルズ打線を2安打無失点で封じ込め、ジャイアンツをワールドチャンピオンに導いたのです。2014年のワールドシリーズは、先発とリリーフでフル回転したバムガーナーの存在なくして語れません。

 ただ、バムガーナーの存在以外にも、世界一になれた要因はあります。まず見逃せないのは、ジャイアンツ打線がメジャー最強と称されるロイヤルズのリリーフ陣を攻略したことです。2勝2敗で迎えたワールドシリーズ第5戦で、ジャイアンツは7回に登板したロイヤルズのケルビン・ヘレーラから2点、さらに続くウェイド・デービスからも1点を奪いました。ポストシーズンでほとんど失点しなかった彼ら豪腕リリーフ陣を打ち崩すことができたのは、ジャイアンツにとって大きな自信になったことでしょう。

 実は今シーズン、メジャーリーグで最も速球に強かったチームは、ジャイアンツだったのです。時速95マイル(約153キロ)以上のストレートに対し、ジャイアンツはメジャー1位となる打率.284を記録していました。プレイオフに進出してくるチームは、いずれも豪腕タイプの投手を数多く揃えています。それらに押さえ込まれなかったことが、ワールドシリーズ制覇につながったのでしょう。

 そしてもうひとつ特筆すべきは、ジャイアンツはホームランを打てなくても多くのゲームをモノにしてきた点です。ジャイアンツのチーム本塁打数は、30球団中17位の132本。チーム最多がバスター・ポージーの22本塁打なので、「破壊力のある打線」とは言いがたいでしょう。ポストシーズンに入っても、計17試合でわずか7本塁打。この数字は、レギュラーシーズンで最も少ないチーム本塁打数(95本)だったロイヤルズよりも、少ない割合だったのです(ロイヤルズはポストシーズン15試合で11本塁打)。今回のポストシーズンで、ジャイアンツがホームランを打って勝った試合は、計12勝のうち4試合しかありません。

 また、タイムリーヒットなしで得点を奪っているシーンが多かったのも印象的です。ワールドシリーズ第7戦でも、2回に2点を奪ったシーンは、いずれも犠牲フライでした。ポストシーズン合計71得点のうち、犠牲フライや内野ゴロの間に奪った得点は20点もあります。この割合は、ポストシーズンに進出した他のチームと比べても、断然に多い数字です。今年は「機動力野球=ロイヤルズ」というイメージが強かったですが、実はジャイアンツもスモールベースボールを体現して勝利を手にしてきたチームだったのです。

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