【MLB】史上最小165cmの首位打者、誕生なるか? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 メジャーの歴史を振り返ると、19世紀にはウィリー・キーラーという選手が身長5.45フィート(約163.8センチ)で、1897年と1898年に首位打者に輝いています。しかし、1900年以降では、アルトゥーベより低い身長の選手が首位打者になったことはありません。身長の低かった主な首位打者は、1901年のジェシー・バーケット(当時セントルイス・カージナルス/5.8フィート=約172.7センチ)、1927年・1934年・1936年のポール・ウェイナー(当時ピッツバーグ・パイレーツ・5.9フィート=約175.2センチ)、1986年のティム・レインズ(当時モントリオール・エクスポズ/5.9フィート)、1989年のカービー・パケット(当時ミネソタ・ツインズ/5.8フィート)などが有名です。つまり、身長5.5フィートのアルトゥーベがタイトルを獲得すれば、近代野球以降、最も身長の低い首位打者誕生となるのです。

 近年のメジャーリーグは投高打低で、バッターの成績は下降傾向です。昨シーズンは両リーグを通じて、シーズン200安打を達成した選手はゼロでした。そんな状況の中、これだけのヒットを量産しているのは驚きです。また、アルトゥーベはヒットを打つ能力だけでなく、ずば抜けた走塁技術を持ち合わせています。俊足の右バッターなので、いうなれば「右のイチロー」と言ってもいいのではないでしょうか。

 そしてもうひとり、ア・リーグのバッターで初タイトルに手が届きそうな選手は、シカゴ・ホワイトソックスのホセ・アブレイユです。シーズン前半に比べてホームランのペースは落ちてきましたが、それでも現在ア・リーグ2位タイの33本塁打。リーグトップのネルソン・クルーズ(ボルチモア・オリオールズ)との差は3本なので、十分に射程圏内です。

 もし、アブレイユが新人でホームラン王になれば、1987年のマーク・マグワイア(当時オークランド・アスレチックス)以来となります。マグアイアはその年、それまでのメジャー新人記録を大幅に塗り替える49本塁打を放ちました。アブレイユは現在40本塁打ペースなので、マグアイアの記録を抜くのは難しいですが、それでも驚くべき数字だと思います。

 アブレイユの打撃主要3部門の成績は、打率.320・33本塁打・99打点。アメリカでは今、「2001年のアルバート・プホルス以来となる『新人で打率3割・30本塁打・100打点』を達成するのか」という話題でも盛り上がっています。2001年は、メジャー史に残る名選手がふたりも誕生したシーズンです。ア・リーグではイチロー選手が、そしてナ・リーグではプホルスが新人王に輝きました。そしてその後、イチロー選手は10年連続シーズン200安打、プホルスは10年連続打率3割・30本塁打・100打点という金字塔を打ち立てたのです。今シーズン大旋風を巻き起こしているアブレイユなら、プホルス以来の快挙を成し遂げてくれるかもしれません。

 1987年のマグワイアは、打率.289・49本塁打・118打点。2001年のプホルスは、打率.329・37本塁打・130打点。数字だけを比較すると、彼らふたりの新人イヤーのほうがアブレイユより上に見えます。しかし、当時のメジャーは打高投低だったので、アブレイユの成績が劣っているわけではありません。現在、リーグトップの99打点をマークしているので、ルーキーイヤーに本塁打王と打点王の2冠を達成すれば、マグワイアやプホルスに並ぶスラッガー誕生と言えるのではないでしょうか。

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